新型コロナウイルス「渡航者介して各国に広がる可能性」
2013年06月11日 18:50
世界保健機関（WHO）とサウジアラビアは6月10日、中東地域を中心に感染が広がっている"新型コロナウイルス"こと「MERS（マーズ）コロナウイルス（MERS-CoV）」（病名は中東呼吸器症候群＝MERS）に関する共同声明を発表した。声明では、現時点で広い範囲での人から人への感染を示すエビデンス（証拠となる研究結果）はないが、家族や医療関係者など濃厚接触者（感染者と密に接した人）への伝播の可能性があるとの見解が示されている。ただし、同ウイルスについては未知の点も多い上に、これまでの報告から渡航者を介して世界各国に広がる可能性があり、国際的な懸念が高まっているとも指摘している。
死亡率60％、男性75％
声明によると、MERSの確定診断例はこれまでに55人。うち40人はサウジアラビア国内の発生例で、残る15人はカタール、アラブ首長国連邦（UAE）、チュニジア、フランス、ドイツ、イタリア、英国からの報告となっている。現時点での報告数は限定的だが、死亡率は60％と推計されている。サウジアラビア国内の報告の75％が男性であること、ほとんどの患者に一つ以上の持病が合併していた特徴があると説明している。米疾病対策センター（CDC）が示す6月10日現在の報告数と死亡数は表の通り（※WHOの報告とは異なる）。
声明では、これまでに明らかになっている主要な感染経路として、
- 地域内での散発例（現在、感染源は不明）
- 家族内での集団感染
- 医療機関での集団感染（フランス、ヨルダン、サウジアラビアで報告）
―が挙げている。
治療については、リバビリンやインターフェロンなど抗ウイルス薬の有効性を示す確実なデータはなく、高用量ステロイド薬の使用は避けるべきとの見解が示された。
WHOとサウジアラビアは、現時点でMERSコロナウイルスの広い範囲での人から人への感染を示すエビデンスはないが、家族や医療関係者など濃厚接触者への伝播の可能性があると分析している。ただし、同ウイルスについては未知の点も多い上に、これまでの報告からウイルスが渡航者を介して世界各国に広がる可能性があり、国際的な懸念が高まっていると強調。各国の医療関係者に対し、原因不明の肺炎に対してはMERSを考慮することや、MERSと診断された患者が発生した場合はWHOへの報告を行うことなどを呼び掛けている。
（編集部）
