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子宮頸がんワクチン、受けるべきか否か―専門家に聞く

 2013年06月26日 12:10

 接種後に痛みやしびれなどの副作用(副反応)が相次いで報告されているとして、国が積極的に推奨することを見合わせた子宮頸(けい)がんワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPVワクチン)。接種自体をやめるよう呼び掛けるものではないが、今年4月に定期接種となって国や自治体が啓発を強化している矢先のことで、接種対象の小学6年から高校1年までの女子とその保護者の中に混乱と不安を招いている。子宮頸がんワクチンを受けるべきか受けないべきか―。日本産婦人科医会常務理事で自治医科大学(栃木県)産科婦人科学の鈴木光明主任教授に聞いた。

痛みの一因は「アジュバント」?

 厚生労働省の調査によると、子宮頸がんワクチンの一つ「サーバリックス」の重篤な副反応報告は301件で、100万回の接種に43.3件の割合。もう一つの「ガーダシル」は56件で、100万接種当たり33.2件という割合だ。これは、日本脳炎ワクチンや小児肺炎球菌ワクチン(ともに100万接種当たり25.7件)、ヒブワクチン(同22.4件)、不活化ポリオワクチン(同5.3件)、インフルエンザワクチン(同2.3件)などに比べて高いことが分かる。

 なぜ、他のワクチンよりも副反応の報告が多いのか。鈴木主任教授は、その要因の一つとして、ワクチンに含まれている「アジュバント」という物質を挙げている。「アジュバントは抗体を作る力を高めるほか、抗体を持続期間を長くする作用があります。その半面、打ったところの痛みや腫れなどの副反応が強くなります。1年に1~2回打つインフルエンザワクチンと違い、子宮頸がんワクチンは効果を長く持たせる必要があるため、アジュバントが必須になるのです」

 自治医科大学産婦人科に勤務する20歳代~30歳代の女性医師の大半が接種した際にも、痛みを訴えることが多かったという。

 重篤な副反応で最近注目されているのが、「複合性局所疼痛(とうつう)症候群(CRPS)」だ。腕などを中心に痛みが発生する病気で、原因はよく分かっていない。ワクチン接種以外にけがや骨折、注射針などの刺激がきっかけとなって発症すると考えられている。国内外の報告では、他のワクチンや抗リウマチ薬の注射だけでなく、採血でも発生するとされている。

 鈴木主任教授はアジュバントの痛みに加え、子宮頸がんワクチンは筋肉に注射すること、短期間で3回接種すること、接種対象者が痛みを感じやすい年齢層の女子であることなどが複雑に絡み合い、副反応の報告を増やしているのではないかと推測する。

国の積極勧奨再開まで待つのも一手

 多くの副反応は、子宮頸がんワクチンの接種との関係が証明されていない一方で、関係がないとも証明されていない。だが、鈴木主任教授は「因果関係が不明とはいえ、副反応が多いのは確か。厚労省の決断は間違っておらず、検証は必要だろう」と、国の決断に一定の理解を示す。同主任教授が代議員を務める学術団体の日本産科婦人科学会も,厚労省の勧告は妥当との声明を発表している(同学会公式サイト)。

 では、これから接種しようと考えていた人や途中まで接種した人はどうすればよいのか。重要なのは、厚労省が「注射針を刺すことが影響している可能性がある。中止するほどの重大な懸念はない」との見解を発表していること。検証の必要はあるが、現時点では接種することのメリットに比べると副反応の発生率としてはそこまで高くないということだろう。

 それでも不安な人に対し、鈴木主任教授は「検証の結果が出て国の積極的な勧奨が再開するまで接種を見送るのも一つの手です。また、2~3回目の接種で悩んでいる場合、1年間以内に3回目を接種すれば十分な効果が期待できるので、それまで待つのもよいでしょう。そのためにも、国はいち早く検証し、その結果を国民に伝えてほしい」と話している。さらに、接種を受ける側も正しい知識を身につけることが大切だという。

 「自動車のシートベルトを考えてみてください。シートベルトを着用していなかった人の死亡率は、着用していた人の約15倍といわれています。中には、シートベルトを着用していても死亡してしまう場合や、まれに着用していたために亡くなった方もいるでしょう。それでも、みんなの安全を守るにはシートベルトを着用することが重要だと思います。子宮頸がんワクチンは国内の死亡例はゼロですが、副反応に苦しんでる方がいるし、ワクチンを接種していても子宮頸がんにかかる人も出てくるでしょう。しかし、多くの女性を子宮頸がんから守るには、検診とともに予防接種を受けることが重要ではないでしょうか」(鈴木主任教授)

(小島 領平)

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