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子宮頸がんワクチン「受ける」「受けない」のリスク比較を

 2013年07月11日 17:30

 6月に国が積極的な推奨を一時中止した子宮頸(けい)がんワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPVワクチン)だが、接種対象の小学6年~高校1年の女子やその保護者らに混乱を呼んでいる。こうした中、小児科医を中心にワクチン関連の啓発活動などを行っているNPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会(VPDの会)」が6月29日、東京都内で医療者や保護者に向けたセミナーを開催。同会の薗部友良理事長(育良クリニック小児科顧問)は、子宮頸がんワクチンの接種を「受けない場合のリスク」と「受けた場合のリスク」の比較が重要と述べた。つまり、「受けないで子宮頸がんになること」と、「受けて副反応(副作用)が出ること」のどちらが重大かを考えてほしいということだ。

  • VPD......Vaccine Preventable Diseases=ワクチンを受けることで防げる病気。水痘(水ぼうそう)のほか、麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、結核、ポリオ、ヒブ感染症、インフルエンザなどが挙げられる。

保護者の判断を尊重しつつ接種続ける

 国が積極的な推奨の中止を発表して以来、接種を見合わせる医療機関が出ており、保護者から医師へ「積極的には勧めていないので、子宮頸がんワクチンは接種してはいけないのですか?」との問い合わせが増えつつあるという。

 今回の国の決定ついて、薗部理事長は「国が公権力の行使を停止したことで、重篤な健康被害に対する国家賠償法第1条に規定される違法性を問われることがなくなったということ」と説明。一方で、定期接種として続いており、原則として自己負担なし、健康被害救済の水準も据え置かれている。

 同理事長は「医療機関や接種を受ける人には実質的な影響はなく、接種率の低下さえ起きなければ国、接種する医師、接種を受ける人の3者にとって望ましい結果だったのではないか」とコメント。その上で、VPDの会として、保護者が「現時点で接種すべきか」を判断できる情報提供を行っていくほか、医療者としては保護者の判断を尊重しつつ、希望者には接種を続けていくことを周知していく意向を示した。

積極的勧奨中止は「がんリスク高まっても自己責任」

 これまで、高齢者のインフルエンザや、子供へのおたふくかぜ、水ぼうそうなど、国の勧奨がない予防接種でも医師から接種を勧めてきた。薗部理事長は「子宮頸がんワクチンもそれと同じ」とし、勧奨中止を前向きに捉えるよう呼び掛けている。

 また、保護者に対しては、予防接種を受けるかどうか検討する際には「接種せずにVPDにかかった場合」と「接種後に有害事象(副作用)が起きた場合」というリスク同士の比較が重要と助言。子宮頸がんワクチンに当てはめると、「予防接種を受けないで将来、子宮頸がんにかかった場合」と「受けて失神や慢性疼痛(とうつう)が起きた場合」のどちらが重大か、ということになる。

 また、積極的な推奨の中止については「極端な解釈をすれば」と前置きした上で、「国が子宮頸がんワクチンについて言っていることは"しっかりとご家族で判断されて、受けたくなければ受けなくても構わない。それであなたのお子さんの子宮頸がんのリスクが高まっても、自己責任であり国の責任はない"ということ」との見解を示した。

 なお、子宮頸がんワクチン接種についての医療者、保護者向けの詳しい情報は、VPDの会の公式サイトで7月1日から公表されている。また、今回のセミナーの映像も会員限定サイトで閲覧できる。

(編集部)

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