貧血持ちの高齢者で認知症リスク1.5倍―米データを検討
2013年08月06日 19:00
女性で多く見られる貧血だが、高齢になっても症状がある場合、背後に重大な病気が潜んでいる可能性もある。こうした中、韓国・亜洲大学医学部のChang Hyung Hong氏(精神科)らは,米国の高齢者が対象の研究(Health ABC試験)データを検討した結果,貧血のある人は、ない人に比べて認知症リスクが1.5倍に上ることが分かったと、7月31日発行の米医学誌「Neurology」(電子版)に報告した。
平均年齢76歳・2,500人超を11年以上追跡
米国では65歳以上の9.2~23.9%が貧血持ちといわれており、日本でも10人に1人の高齢者が貧血に悩まされているという。高齢者の場合、原因の約半数が胃や大腸など消化管の出血で、がんが見つかることも少なくない(関連記事)。最近の研究では,貧血が急速な認知機能低下や認知症リスクとの関連があることも示されているようだ。
Hong氏らは、Health ABC試験のデータから1999~2000年の採血データが入手できた2,552人(平均年齢76.1歳)を選び出し、研究開始時に貧血が認められた393人(貧血グループ)と認められなかった2,159人(対照群)に分け、11年以上にわたって追跡した。
その結果、455人(17.8%)が認知症を発症し、貧血グループが393人中89人(22.7%),対照グループが2,159人中366人(17.0%)。貧血グループの認知症リスクは対照グループの1.64倍だった。
また,認知症の危険因子とされるタンパク質「ApoE4」や認知機能の影響を除外すると貧血の認知症リスクは1.47倍,脳卒中や高血圧,糖尿病などの影響を除外した場合でも1.49倍だった。
以上のことから,Hong氏らは「貧血とのちに認知症を発症するリスクとの関連が示唆された」と結論。貧血を認知症の危険因子と考え,メカニズムの解明などに関するさらなる研究の必要性を主張した。
(編集部)