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子供や若者の抗精神病薬使用で糖尿病リスク3倍―米研究

 2013年08月26日 18:00

 子供の糖尿病といえば自己免疫疾患の1型糖尿病がほとんどだったが、近年は先進国を中心に生活習慣が招く2型糖尿病が増えている。そんな中、米バンダービルト大学医学部のWilliam V. Bobo氏(精神科)らは、6~24歳の4万3,000人を対象に検討した結果、抗精神病薬を使っている子供や若者では、抗うつ薬や抗不安薬などその他の向精神薬を使っている人に比べて2型糖尿病になるリスクが3倍に上ったと、8月21日発行の米医学誌「JAMA Psychiatry」(電子版)に発表した。

病気の内訳はADHDが最多

 抗精神病薬は、向精神薬の中でも主に統合失調症の治療に使われている薬。非定型抗精神病薬に分類される「MARTA」という種類など、中には体重の増加や血糖値の上昇といった副作用が強いものもある。

 Bobo氏らは、米テネシー州の医療データから、1996年1月1日~2007年12月31日に1年以上「メディケイド」(低所得者や身体障害者向けの公的医療保険制度)を受給した6~24歳の中で、登録時に糖尿病や統合失調症にかかっておらず、妊娠していないことなどを条件に集めた4万3,287人を、以下のグループに分けて検討した。なお、向精神薬は抗精神病薬のほか、抗うつ薬や抗不安薬、気分安定薬、睡眠薬などがある。

  • 抗精神病薬グループ...最近、抗精神病薬を使い始めた2万8,858人(平均年齢14.5歳、男性56.0%)
  • 対照グループ...抗精神病薬グループと年齢や人種などが一致し、過去1年以内に抗精神病薬を使っておらず、最近になって抗精神病薬以外のの向精神薬を使い始めた1万4,429人(平均年齢14.5歳、男性55.9%)

 病気の内訳は注意欠陥・多動性障害(ADHD)が最も多く(抗精神病薬グループ38.9%、対照グループ38.3%)、次いでうつ病以外の気分障害(同33.3%、32.5%)、素行障害(同25.3%、24.9%)、不安障害(同20.6%、19.9%)、うつ病(同19.3%、19.5%)などだった。なお、日本ではADHDへの使用が認められている抗精神病薬はない。

使うのをやめても1年以内はリスク高いまま

 検討の結果、対照グループと比べた抗精神病薬グループの2型糖尿病リスクは3.03倍で、6~17歳に限定すると3.14倍。使う量の合計が多くなるほどリスクが高まり、計100グラム以上(クロルプロマジン換算)では5.43倍(6~17歳では7.05倍)だった。また、抗精神病薬を使い始めて1年以内のリスクは2.49倍と高く、使うのをやめて1年後までのリスクも2.57倍と高いままだった。一方、1型糖尿病のリスクは上昇しなかったという。

 薬の種類別では、「MARTA」や「SDA」を含む非定型抗精神病薬で2.89倍、SDAの「リスペリドン」に限定すると2.20倍だった。

 これらの結果から、Bobo氏らは「抗精神病薬を使っている子供や若者は、その他の向精神薬を使っている同年齢層の人たちに比べ、2型糖尿病を発症するリスクが3倍に上ることが分かった。しかもそのリスクは、抗精神病薬を使い始めてから1年以内、あるいは使うのをやめてから1年以内でも高く、使う量が多くなるほど上昇することなども明らかになった」と結論している。

(編集部)

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