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6カ月後の断酒率47%、アルコール依存症に"待望の新薬"

 2013年10月11日 10:30

 厚生労働省によると、国内のアルコール依存症患者は80万人と推計されているが、治療を受けているのは5%程度。また、治療を受けたとしても、患者が飲酒を続けたいがために治療に消極的なこと、治療薬が2種類しかないことなどによって、治療効果(完全断酒率)がなかなか上がらない。こうした中、30年ぶりに新しい薬が登場した。久里浜医療センター(神奈川県)の樋口進院長は10月7日、東京都内で開かれたプレスセミナー(主催=日本新薬)で、断酒補助薬「レグテクト」(一般名アカンプロサート、処方箋薬)について、国内の臨床試験で6カ月後の完全断酒率が47%と、比較した偽薬(プラセボ)より11ポイント高かったことを紹介。「待望の新薬」と述べた。

酒が飲みたくなる中枢神経バランスを改善

 世論の厳しさが増している喫煙に比べ、飲酒に対して社会はまだまだ寛容。これがアルコール依存症を生み続ける一因とも指摘されている。治療が必要なアルコール依存症の患者は80万人だが、アルコール依存症の疑いがある人は440万人、多量飲酒(純アルコール1日60グラム以上=ビール中瓶3本以上)は860万人と推計されている。

 アルコール依存症は、摂取した大量のアルコールが脳内に吸収され、精神的な依存からやがて身体的な依存へと進んでいく。身体的依存(神経順応)の状態になると、興奮と抑制をつかさどる2つの脳神経のバランスが崩れ、それを補うために自然とアルコールが欲しくなる。

 レグテクトは、興奮をつかさどるグルタミン酸作動性神経が活発になり過ぎるのを抑え、脳の中枢神経のバランスを保つことで飲酒したくなる気持ちを抑えることができるという。国内で行われた臨床試験では、治療を始めて6カ月後の完全断酒率が、プラセボを服用していたグループで36.0%だったのに対し、レグテクトを服用していたグループでは47.2%と、約11ポイント高かった。

治療の基本は心理社会的治療

 わが国のアルコール依存症治療を牽引してきた樋口院長は、30年ぶりに登場したこの新たな断酒補助薬について「待望の新薬」と歓迎。治療の基本は心理社会的治療(個人または集団精神療法、認知行動療法、作業・スポーツ療法、自助グループへの参加など)と念を押した上で、レグテクトは「入院などで断酒期間を設け、(強烈に酒が飲みたくなる)離脱症状が終わってから使用してほしい」と助言している。

 なお、主な有害事象は下痢で、服用開始から4週までに高い頻度で出ていたが、いずれも軽~中等度で、何も処置しないもしくは整腸薬などを服用することで回復し、レグテクトの服用は続けられたという。

 適正使用については、「厚生労働科学研究を通じて,2013年は飲酒量を低減させるためのガイドライン(指針),来年は治療のガイドラインを作成する予定で,その中にレグテクトの使用についても記載する」と述べている。

(編集部)

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