リウマチ治療中だけど母乳で育てたい! その希望はかなう?
2014年04月04日 06:00
「妊娠中には関節リウマチの症状が楽になる」といわれるように、母体にとって本来は異物である胎児を守るべく、妊娠中は母親の免疫力が抑えられるが、出産とともに一気に回復する。そのため、妊娠中はおさまっていた関節リウマチの症状が急激にぶり返す(再燃する)ことがある。2月27日に開催された神戸大学の整形外科リウマチ教室「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」では、同科の三浦靖史准教授が関節リウマチ患者の育児について講演。「病状をしっかりチェックして、症状が再燃するようであれば、状況が許す限り速やかに治療を再開する必要がある。しかし、母乳育児を希望する場合には、使える薬が限られることにも要注意」と述べ、その際の治療選択肢について助言した。
メトトレキサートはNG
母乳は最も優れた栄養源であるとともに、母乳に含まれる抗体(免疫グロブリン=Ig)には乳児を守る作用がある。さらに、授乳は母と子のスキンシップやコミュニケーションの営みでもあり、双方にさまざまなメリットをもたらすなどの理由から、「母乳で育てたい」と希望する母親は多い。
では、関節リウマチの患者が母乳育児を希望する場合、どんな点に注意が必要なのか。
治療薬の一つであるメトトレキサート(MTX、商品名リウマトレックスほか)は化学物質で、母親が服用すると母乳に移行し、赤ちゃんがMTXを服用するのと同じ状態になってしまう。そのため、妊娠中と同じく授乳中はMTXを使えず、使うならば授乳は中止する必要がある。
生物学的製剤は「理論上問題なし」だが...
一方、レミケードやエンブレルなどの生物学的製剤は、母乳にいくらか移行するものの、タンパク質なので乳児の胃や腸などで消化され、薬のまま吸収されるとは考えにくい。そのため「生物学的製剤を使った治療中の授乳は、理論上は問題ないと考えられている」と三浦准教授は説明する。
ただし、生物学的製剤の注意書き(添付文書)には「授乳中の投与に関する安全性は確立していないため中止させること」と記されていることについても、理解しておく必要がある。
出産後に関節リウマチの治療を再開するに当たっては、母乳育児のメリットと治療の制限が及ぼすデメリットについて十分に理解し、主治医とよく相談して治療方法を選択することが重要という。
(長谷川 愛子)
神戸大学 整形外科リウマチ教室
神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。