梅毒が都内で流行―07年の2.5倍、男性が9割占める
2014年04月24日 10:30
日本では「過去の病気」と考えられていた梅毒だが、2013年の東京都内での報告数が前年の1.4倍、2007年と比べると2.5倍に上ることが、国立感染症研究所の調査によって分かった。報告された417人のうち男性が9割近くを占めており、感染経路は「同性間の性的接触」が最も多かったという。感染研は4月21日付の速報で「アウトブレイク(地域内流行)と捉えられる」との見方を示し、全国の報告数も昨年は過去10年で最多だったことから、感染がさらに拡大する恐れがあるとして警鐘を鳴らしている。
全国でも2010年から右肩上がり
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌が原因の感染症。感染すると2~3週間でリンパ節炎や皮膚などに症状が現れ、進行すると大動脈瘤(りゅう)や神経の麻痺(まひ)、認知症などの重い病気にかかる場合もある。
国立感染症研究所によると、日本では1987年をピークに減少傾向だったが、2010年を境に右肩上がりとなり、2013年の全国の報告数は1,226人(男性989人、女性237人)と、前年から1.3倍以上に増えている。
2013年の都内での報告数は417人(10万人当たり3.2人)で、前年の1.4倍、2007年の2.5倍に上る。性別では男性が88%を占めており(男性365人、女性52人)、年齢別では男性は25~29歳が最も多く、次いで35~39歳などだった。なお、都の調査によると、2014年は4月6日現在で102人(男性が84%)が報告されているという。
異性間の性的接触による感染も増加
性器クラミジア感染症や淋(りん)菌感染症(淋病)などの代表的な性感染症では異性間の性的接触による感染が多くを占めているのに対し、梅毒では同性間の性的接触が最多(2013年の都内では男性の68%)。これは2007年の報告と比べて11.3倍という。全国の報告でも、同性愛男性の性的接触が男性感染者の過半数を占めている。
感染研では、都内の報告数が過去5年間の平均(322人)を大きく超えていることから「発生状況はアウトブレイクと捉えられ、全国の報告数に比べ男女とも高い。特に男性に顕著で、MSM(同性愛男性)間の感染が報告数増加の主体になっていると考えられる」との見解を示している。
一方で、異性間での性的接触による感染も増加しており、同性愛男性が多い地域以外からの報告も増えていることなどから、「一般住民への広がりも危惧される」として、医療関係者や感染する割合が高い人々、妊婦などに注意を促している。
(編集部)