高齢者の貧血は注意、がんや消化器病が原因に
2014年06月16日 06:00
高齢者の10人に1人は貧血といわれる。多いのが鉄欠乏性貧血で、慢性的な経過をたどるため症状に気付きにくい。がんや消化器病などが原因のケースが多いので、自治体の健康診断を受けるなど注意してほしい。
少ないヘモグロビン
高齢者の貧血は、日本では血液中の血色素であるヘモグロビン濃度が男女とも1デシリットル当たり11グラム未満とされている。
東京都健康長寿医療センター血液内科の宮腰重三郎部長は「血液中の鉄分が少なくなる鉄欠乏性貧血の原因は胃がん、大腸がんをはじめとする悪性腫瘍や胃潰瘍などの消化器病が多いのです」と指摘する。
若い人では貧血になると息切れや疲れやすいといった症状が典型的だが、高齢者ではゆっくりと進行するので貧血症状に気付きにくく、さらに多くの病気を合併しているため、そうした病気の症状が前面に出てくるケースが多い。
「例えば、狭心症がある人が貧血になると心臓への負担が大きくなるため、胸部の痛みが前面に出るなどします」(宮腰部長)
鉄分多い食品を
高齢者が貧血になると、夜間にわめくなどのせん妄を起こしやすいという報告もある。
「こうした症状に気付いたときには、かかりつけの病院や医院で血液検査を受けると早期発見につながります。また、健康な高齢者も自治体の健康診断はきちんと受けてください」(宮腰部長)
それで貧血と分かった場合は、原因を調べてもらうこと。がんや消化器病が原因と診断がつけば、その治療を受ける必要がある。
「それとともに、鉄欠乏性貧血に対しては鉄剤を用います。鉄剤を造血剤と誤解している人が多いのですが、これは血液中に不足している鉄分を補充するのが目的です」(宮腰部長)
日常の食生活は、バランスよく取るのはもちろん、レバーやホウレンソウなど鉄分の多い食品を積極的に取るように宮腰部長は勧めている。
(編集部)
2013年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)