思春期の神経性食欲不振症、命失う恐れも
2014年06月20日 06:00
拒食症とも思春期痩せ症とも呼ばれる神経性食欲不振症は、肥満に対する恐怖が強くて食事の量が減り、著しく痩せる。大阪樟蔭(しょういん)女子大学大学院人間科学研究科の甲村弘子教授(人間栄養学)は「患者の6%が命を失うという報告があります。早く気付いて」と呼びかけている。
深刻な無月経
神経性食欲不振症は拒食のみのタイプと、過食しては吐き、下剤を飲んで排泄(せつ)するというタイプに分かれる。14~18歳を中心に思春期に多いが、最近では初経を迎える前の小学生や結婚後の発症も珍しくないという。
体重が増えることの嫌悪や恐怖、痩せていることを自覚できないなどの精神症状があり、拒食、隠れ食いや過食が見られ、逆に家族には食べることを強要する。
深刻な症状は無月経だ。「人間の体は生命を維持することが最優先ですから、月経が止まるということは命に関わる事態を訴えているのです」と甲村教授は警告する。
骨密度も減少
神経性食欲不振症の背景には、痩せている女性が美しいという社会的風潮がある。友達や家族の「太っている」「尻が大きくなった」などの言葉が、細い体形が女性の価値であるような社会の傾向と結び付き、拒食のきっかけになる。
頑張り屋で成績の良い子に多いのも特徴だ。小学生の頃は勉強すれば成績に反映されても、中学生になると競争が激しくなって努力が報われないこともある。しかし、減量は頑張れば数字に現れることから達成感が得られるのだ。
治療は心と体の両方から取り組む必要があり、精神科や心療内科で行われる。病状が改善して体重が標準体重の70%以上になれば、産婦人科での無月経の治療も大切になる。
甲村教授は「後遺症として問題になるのは骨粗鬆(しょう)症です。腰椎や太ももの骨密度が減少し、骨折の頻度が健康な人の7倍という報告があります。月経が止まることは警告のサイン。今すぐに治療を受けてください」と話している。
(編集部)
2013年5月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)