ブルーライト、昼間の"浴びな過ぎ"も体内時計狂わす
2014年07月22日 10:30
パソコンやスマートフォン(高機能携帯電話)、タブレット型端末のLEDディスプレーなどの光に多く含まれているブルーライト。多く浴びると目の障害だけでなく、いわゆる体内時計(概日リズム=サーカディアンリズム)を狂わせることが指摘されており、それを防ぐ眼鏡なども発売されている。慶應義塾大学眼科学の綾木雅彦特任准教授は、7月3~4日に徳島市で開かれた日本睡眠学会の会合で、ブルーライトを夜間に浴び過ぎるだけでなく、昼間十分に浴びないことも概日リズム障害を引き起こすと指摘。同時に、就寝前はスマートフォンなどの使用を控えるよう助言した。
子供の夜型化にも影響か
ブルーライトは、高エネルギー可視光線(HEV)とも呼ばれ、人の目で見ることができる可視光線のうち波長が380~495ナノメートルのものを指す。紫外線(400ナノメートル以下)と一部重なっており、目の網膜や角膜への影響のほか、眼精疲労などの目の障害を引き起こすといわれている。
概日リズムへの影響も、ブルーライトが引き起こすものの一つ。人の網膜には、色を判断する錐体(すいたい)細胞と明暗を判断する桿体(かんたい)細胞とともに、「ipRGC」と呼ばれる細胞がある。この細胞は概日リズムのコントロールに関わっており、波長が460~480ナノメートルの光に反応するとされている。ブルーライトの波長と重なっていることから、パソコンや携帯電話などの普及によって概日リズムが狂ってしまう人が増えると懸念されている。
また、スマートフォンやタブレット型端末など持ち歩ける携帯端末が普及したことで、子供の夜型化を危惧する声が大きい。夜型化の要因はさまざまだが、綾木特任准教授は「ブルーライトの影響は否定できない」とし、特に就寝前はスマートフォンなどの使用を控えるよう助言した。
白内障手術で睡眠の質改善
綾木特任准教授らは、健康な人に午後9時以降、ブルーライトを減らす効果がある眼鏡を3日間かけてもらったところ、眠りを誘うホルモン、メラトニンが濃くなる時間帯が毎日15分ずつ早まっていたとの研究結果を報告している。これは、眼鏡でブルーライトの量を減らしたことから、「夜になった」という信号が体内時計に伝わり、体が睡眠モードに入りやすくなったことを意味するという。
一方で、昼間に十分なブルーライトを浴びないことも健康に悪い影響を及ぼすようだ。白内障が進行するとipRGCに取り込まれるブルーライトの量が減るのだが、白内障の手術を受けた高齢者で睡眠の質が顕著に改善することが、綾木特任准教授らの研究から分かっている。
これについて綾木特任准教授は、昼間に十分な量のブルーライトを浴びる必要があることを示唆する結果とし、「つまり、概日リズムを崩さないよう、ブルーライトは昼間に十分な量を受容し、夜間は低減させことが重要だ」と提言した。
(編集部)