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エボラ熱の米国人2人救った開発中の薬「ZMapp」とは?

 2014年08月08日 10:30

 1,000人近い死者を出すなど、西アフリカで猛威を振るっているエボラ出血熱。現地の医療支援に当たっていた2人の米国人に感染し、本国へ移送されて話題となった。一時は深刻な容体だったものの、移送先の米エモリー大学病院で順調に回復していると伝えられている。ここで注目されているのが、2人に投与されたという「ZMapp(ジーマップ)」と呼ばれる薬。まだ開発中だが、西アフリカでの流行を食い止める希望の薬となるのか、また、ほかにも開発中の治療薬があるのか―。当局の発表や報道などから探った。(関連記事:エボラ感染者移送で物議の米国、「感染拡大は1例もない」

共に帰国できるまでに回復

 本国に移送されたのは、米国のキリスト教系支援団体「サマリタンズ・パース」のKent Brantly医師と、同じく米キリスト教系支援団体「SIM」の宣教師Nancy Writebolさん。報道などによると、西アフリカのリベリアで医療支援に当たっていたBrantly医師は、7月22日に発熱したため隔離室に入室。血液検査でエボラウイルスへの感染が判明した。Writebolさんが発症したのはその3日後だったという。

 2人が危険な状態になっていた中、現地にエボラウイルスに効く可能性がある「開発中の薬」が到着。2人に投与したところ、共に帰国できる状態にまで回復したとされる。なお、Brantly医師には、自身の治療で回復した14歳の少年から「先生に助かってほしい」と提供された血清(抗血清)も投与されたという。抗血清は、感染症から回復した人の血液から作るもので、治療薬のないエボラ出血熱から患者を救う唯一の方法とされている。

 「開発中の薬」は、サマリタンズ・パースの発表では「experimental serum(実験的血清)」とされているが、他の報道などを鑑みると、これは開発中の薬「ZMapp」を指している可能性が高い。

「現時点で流行地で使用される見込みは少ない」

 Brantly医師らは現在、帰国してアトランタにあるエモリー大学病院に入院中。2人が回復したことから、米国を中心にこの未承認薬への関心がにわかに高まっている。当局である米疾病対策センター(CDC)も、8月5日に公式サイトでZMappに関するQ&Aコーナーを開設した。

 それによると、ZMappは米製薬メーカー、マップ・バイオファーマシューティカルなどが開発中の薬で、エボラウイルスのタンパク質とくっついて新たな細胞への感染を防ぎ、血液の中にあるウイルスを破壊する3種類の抗体を組み合わせたもの。まだ開発の段階にあり、人を対象とした臨床試験は行われていないが、サルでの実験では死亡を防ぐ効果が認められている(投与したサルで4/6匹が生存、投与しなかったサルでは全て死亡)。

 Brantly医師らは、ZMappの投与によって深刻な状態から起き上がれる状態まで回復したとされる。2人だけでなく、西アフリカの死亡者を食い止める希望の薬とはならないのだろうか。

 ZMappについて、CDCは「現時点で人への安全性や有効性が検討されていない」と説明。今回の特例的な措置はサマリタンズ・パースの非公式な手配によるもので、一般に入手できる可能性は低く、現時点では流行地で使用される見込みは少ないとした。

 開発しているマップ社は現段階で使用可能なZMappの数を「ごくわずか」としており、もし今すぐ承認されたとしても、流行地で使えるほどの量を生産するには数カ月かかるとの情報もある。

治療薬続々、予防ワクチンも開発中

 一方、ZMapp以外にも開発中の治療薬があり、カナダ製薬メーカー、テクミラ・ファーマシューティカルズの「TKMエボラ」(抗エボラウイルスRNA干渉薬)、米製薬メーカー、バイオクリスト・ファーマシューティカルズの「BCX4430」(RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬)が挙げられている。また、米製薬メーカー、ニューリンク・ジェネティクスでは予防ワクチンを開発中という。

 テクミラ社のTKMエボラは2014年1月から健康な大人を対象とした臨床試験(第Ⅰ相)を開始。同年3月には米食品医薬品局(FDA)の迅速審査の対象品目(ファスト・トラック)に指定された。ファスト・トラックは「追い越し車線」の意味で、完治が難しい病気に高い効果が見込める新薬を優先的に審査し、いち早く市場に送り出すことを促す制度だ。

 バイオクリスト社のBCX4430は、広い範囲の抗ウイルス作用が期待されており、エボラウイルスだけでなく、黄熱ウイルスに対する試験などが行われている。CDCによると、2014年末にはエボラウイルスに関する臨床試験(第Ⅰ相)が開始される見込みという。

(編集部)

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