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10月13日は「世界血栓症デー」、学会が記念日登録

 2014年08月27日 10:30

 日本血栓止血症学会は8月25日、都内で記者会見を開き、国際血栓止血学会が定める「世界血栓症デー」(毎年10月13日)を日本記念日協会に登録したことを発表した。10月13日は、血栓症を提唱したドイツの病理学者ルドルフ・ウイルヒョウの生誕日。記念日登録することで、日本での血栓症の啓発活動をより強化していくのが狙いだ。血栓症は、血管の中で血栓(血の塊)ができ、それが詰って血流が止まってしまう病気の総称で、心筋梗塞や脳梗塞などが含まれる。今年は、その中でも静脈静脈血栓塞栓(そくせん)症、いわゆる"エコノミークラス症候群"の啓発がテーマ。日本血栓止血学会は記念日当日に都内で市民公開講座を開く予定だ。

欧州では毎年50万人が死亡

 血液は固まる性質があり、それによってケガなどで出血しても自然に止まるようになっている。しかし、この性質に"体の不調"が加わることで悪く作用するのが血栓症だ。大きく動脈血栓症と静脈血栓症に分けられ、前者は心筋梗塞や脳梗塞などを招き、後者は静脈血栓塞栓症などを起こすことで知られている。

 第1回世界血栓症デーのテーマに選ばれたのは静脈血栓塞栓症。脚の静脈の中でできた血栓が剥がれて血流に乗り、そのまま肺動脈を詰らせる病気だ。最悪の場合は死に至り、欧州では毎年約50万人、米国でも毎年10~30万人ほどが死亡しているといわれる。しかし、日本では全国的な患者の登録がなく、どの程度の人がかかり、どの割合で死亡しているかの詳細は不明。一般市民だけでなく、医師でもこの病気に対する認識は低いという。

 血栓症の主な原因は「血流が悪くなる」「血管の内側にある壁に傷がつく」「血液が固まる作用が強くなる」―の3つが挙げられる。その背景には寝たきりや肥満、手術、脱水、妊娠、ケガ、骨折、やけどなどがあり、飛行機などに乗って長時間同じ姿勢でいることも「血流が悪くなる」を引き起こすとされている。

 同学会の尾崎由基男理事長(山梨大学医学部教授)は「血栓症は、予防可能で治療できる病気にもかかわらず,一般の認識が低い。できるだけ多くの人に知ってもらいたい」とし,「啓発活動によって血栓症で命を落とす人が少しでも減るよう、努力を続けていきたい」と述べた。

エコノミークラス症候群の死亡率は心筋梗塞以上

 今回のテーマであるエコノミークラス症候群こと静脈血栓塞栓症は、脚のふくらはぎなどの静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」と、その血栓が血流に乗って肺動脈にたどり着き、そこの血流をふさいでしまう「肺血栓塞栓症」を合わせた病名。肺動脈が血栓でふさがれると酸素が取り込めなくなるので、呼吸困難や胸の痛みなどを引き起こす。

 欧米での調査では、肺血栓塞栓症を発症した人の死亡率は11.9%とされている。これは心筋梗塞の死亡率(7.3%)を大幅に上回る。そのため、記者会見で説明に当たった同学会の保田知生氏(近畿大学医学部講師)は「いったん発症したら助かるのが難しい病気」としている。

 発症しないためには予防が重要で、血栓ができる原因を一つずつ取り除くことが予防となる。3つの主な原因のうち「血管の内側にある壁に傷がつく」と「血液が固まる作用が強くなる」には薬による治療が必要だが、「血流が悪くなる」には運動やマッサージ、こまめな水分補給、長時間同じ姿勢でいないなど、自身の努力が重要となる。

発症したら早めに受診を!

 もし、静脈血栓塞栓症を発症してしまっても、早めに治療することで障害が残る可能性が減るという。そのため、以下の症状に気づいたら、早めに循環器内科や血液内科などの専門医を受診し、適切な治療を受けることが勧められる。

  • 呼吸が苦しい
  • 冷や汗が出る
  • 動悸(どうき)がする
  • 失神する
  • 熱が出る
  • 胸が痛い

 保田氏は「静脈血栓塞栓症は、日本人でも徐々に増加しており、近い将来、欧米と同じ頻度になると思われる。予防で死亡を避けられる可能性がある病気であり、発症してしまても適切な治療によって障害が残る可能性が減ります」と説明。病気の存在を知り、予防や早期受診を心がけるよう呼びかけた。

(小島 領平)

世界血栓症デー日本・市民公開講座2014 開催

 日本血栓止血学会は10月13日の世界血栓症デー当日、東京・砂防会館で、市民公開講座『知って得する血管のおはなし―楽しく長生きするために、「血栓症」という必須知識―』を開催します。血の固まる仕組みや、静脈血栓塞栓症などについて、専門家が分かりやすく解説。静脈血栓塞栓症が多発している東日本大震災の避難所からの中継のほか、血栓症を予防する体操もレクチャーします。来場者には「血栓症ガイドブック」をプレゼント。参加費は無料。参加ご希望の方は住所、電話番号、氏名、年齢を記入の上、はがきかファクシミリ、電子メールで申し込みを。申込者多数の場合は抽選となります。締め切りは9月25日で、当選した方には10月1日から随時「ご招待状」を送付します。

世界血栓症デー日本・市民公開講座2014
知って得する血管のおはなし―楽しく長生きするために、「血栓症」という必須知識―

日時:2014年10月13日(月・祝) 13:30~16:00(開場12:30予定)
会場:砂防会館 別館(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5)

定員:500人(申込制)
申込方法:下記のいずれか
〈はがき〉〒102-0074 東京都千代田区九段南2-1-30 イタリア文化会館ビル8階
(株)メディカルトリビューン内「世界血栓症デー日本」運営事務局
〈ファクシミリ〉03-3239-7246
申込みフォーム〉新規ウィンドウで開きます
プログラム
◆第一部 講演会
・「なぜ血は固まるの?」講師:森下英理子(金沢大学)
・「血が固まる病気:血栓症とは?」講師:後藤信哉(東海大学)
・「血栓症のひとつ、エコノミークラス症候群ってどんな病気?」講師:山田典一(三重大学)
・みんなで参加! 予防体操
◆第二部 パネルディスカッション
「知られていない? 日常生活とエコノミークラス症候群」
コーディネーター=池田正孝(大阪医療センター)、中西宣分(国立循環器病研究センター)
パネリスト=小林隆夫(浜松医療センター)、左近賢人(大阪府立成人病センター)、植田信策(石巻赤十字病院)、榛沢和彦(新潟大学)[中継]、藤田悟(宝塚第一病院)
※敬称略
問い合わせ先:電話 03-3239-7273(平日午前10~午後5時)

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