脊柱管狭窄症治療の最前線、生活スタイルで治療選択
2014年09月12日 06:00
脊柱管狭窄(きょうさく)症の治療では、保存療法が効かない場合などには、手術を行うことがある。慶応義塾大学病院(東京都新宿区)整形外科の松本守雄准教授は「背骨の手術の中で最も多く、体に負担のない方法が広まっています」と話す。
まずは薬物療法
治療は一般に、まずは薬物を用いた保存的治療を行う。プロスタグランジン製剤は神経の血流を良くする薬で、症状が軽い場合に効き目がある。また、痛み止めとして非ステロイド性消炎鎮痛薬を使うことがある。
最近は、神経に痛みの原因がある場合に効くプレガバリンや弱オピオイドを用いることも多い。神経やその周辺に薬物を注入する神経ブロック注射は、神経根が圧迫されているタイプに効果がある。
日常生活では、手押し車で出掛ける、腹筋や背筋の力を落とさないよう水中歩行するなど、運動を心がけることも大切になる。
10分間歩けないなら手術を
「保存療法の効果がない場合で、10分間あるいは500メートル歩き続けられない場合は、手術を考慮してもよいでしょう。脚の力が入らない、尿の勢いが弱いといった症状は神経麻痺(まひ)が強いため、早い時期の手術を勧めます」と松本准教授は助言する。
手術には「除圧術」と「固定術」がある。固定術は、椎骨のずれを金属で固める手術で、改善されてきているとはいえ、体への負担が大きいので、主に若くて活発な生活を望む患者に行われる。
多くのケースでは、背中側から切開し、神経を圧迫している椎骨、靱帯(じんたい)、椎間板などを切除し、圧力を減らす「除圧術」を施行。最近は、筋肉や靱帯をできるだけ温存する方法を行う傾向にある。負担軽減のために、顕微鏡や内視鏡を用いて手術する医療機関も増えている。
入院期間は通常、1週間から10日間で、内視鏡手術の場合はさらに短い。症状は全体的に6~7割は解消されるが、しびれやこむら返りが残る人も多い。
松本准教授は「この病気は患者が希望する生活スタイルを考慮し、医師と話し合って治療法を選択できる代表的な病気です」と話す。
(編集部)
2013年10月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)