肺がん発症しやすいCOPD、心筋梗塞や骨粗鬆症も
2014年09月24日 06:00
肺の組織が壊れて苦しくなるCOPD(慢性閉塞=へいそく=性肺疾患)は、放置すると肺がんなど命に関わる病気の引き金になる。心筋梗塞や骨粗鬆(しょう)症などの合併率も高いといわれ、できるだけ早く発見し、治療することが重要だ。東京女子医科大学八千代医療センター(千葉県)呼吸器外科の関根康雄教授に聞いた。
炎症が全身に波及
COPDは、肺の組織が壊れて息切れや呼吸困難を起こす肺気腫、しつこい咳(せき)や痰(たん)で気管支が狭くなる慢性気管支炎をまとめた病名。日本人の死亡原因の10位に入る。主に喫煙が原因で、たばこを吸わない人でも間接的に煙を吸っていると発症の危険があるという。
咳と痰に加え、体を動かしたときの息切れが主な症状だが、初めは自覚症状がほとんどない場合が多い。関根教授は「症状が長く続いても、年のせいと思い込んで、受診の機会を逃す人が多いのです」と説明する。
全国で約530万人がかかっている可能性があるといわれながら、実際に診断されているのは20万人程度にとどまるのはそんな理由からだ。「COPDは単なる呼吸器疾患ではなく、肺の慢性炎症が全身に波及してさまざまな合併症を引き起こします」(関根教授)
関根教授によると、肺がん患者の2~5割がCOPDにかかっており、COPD患者では健康な人と比べて5~10倍肺がんになりやすい。COPD患者のがんは、悪性度が高く、手術なども制限されることが多い。COPDはほかに、心筋梗塞などの心血管病、骨粗鬆症などを引き起こす可能性も高いという。
早期なら治療効果も
関根教授らは、千葉市などと協力して肺がん検診の際に、COPD患者を見つけ出す仕組みを作った。問診票で疑いのある人を見つけ出し、肺機能検査で絞り込むという方法だ。早期に発見できれば、禁煙や気管支拡張薬などによる治療効果も期待できる。
千葉市では、2010年度は約25万8,000人が肺がん検診の対象となり、8万9,100人が受診した。問診票から1,170人がCOPDの疑いがあることが分かり、そのうち567人が2次検診を受けた。その結果、161人がCOPDと診断された。
関根教授は「60歳以上で、長引く咳や痰、喫煙歴がある人はCOPDの可能性が高い。できるだけ早く検査を受けてください」と呼びかけている。
(編集部)
2013年9月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)