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閉経後のホルモン補充療法、短期間でも卵巣がんリスク

 2015年02月27日 10:30

 女性の更年期障害の治療などに使われているホルモン補充療法(HRT)を受けていると、卵巣がんになる危険性が高まると、英オックスフォード大学のリチャード・ピトー教授ら国際共同研究グループが報告した。HRTを受けていた期間が5年未満と短くても、卵巣がんリスクは高まっていたという。詳細は、2月13日発行の英医学誌「ランセット」(電子版)に掲載されている。

足りなくなった女性ホルモン補う

 閉経前後の女性は女性ホルモンが足りなくなり、更年期障害などを引き起こすことがある。その治療などに使われているのが、飲み薬や貼り薬、塗り薬で女性ホルモンを補うHRTだ。

 この治療と卵巣がんの関係は以前から指摘されていたが、研究内容が不十分などの理由から信頼性が低いとされていた。そのため、各国のガイドライン(指針)ではHRTによる卵巣がんの危険性について言及していない場合がほとんどという。

 そこでピトー教授らは、1998年以降に発表されたHRTと卵巣がんなどに関するほぼ全ての研究(疫学研究)と公表されていない研究から、閉経後に卵巣がんを発症した女性1万2,110人分のデータを入手。HRTを受けた人(55%)と受けてない人で、卵巣がんにかかる危険性を比べた。

5年未満のHRTでリスク1.43倍

 その結果、HRTを受けている女性では期間が5年未満でも、HRTを受けていない女性と比べて卵巣がんにかかる危険性が1.43倍多く、調査時にHRTを受けていなかった女性を合わせても1.37倍に上った。HRT開始年齢や種類、肥満度、ピル(経口避妊薬)の使用などは影響しなかったという。

 一方、卵巣がんの種類では差が認められ、漿液性腺がんで1.53倍、類内膜腺がん1.42倍だったのに対し、他の2種類(粘液性腺がんと明細胞腺がん)のリスクは上がっていなかった。

 また、漿膜がんと類内膜がんのリスクはHRTを中止すると徐々に低下したが、5年以上受けていた女性では、中止の10年後もリスクが1.25倍のままだった。

結論を出すのは時期尚早か

 ピトー教授は「卵巣がんにかかる危険性が上がる原因がHRTならば、50歳前後でHRTを5年間受けた女性では、卵巣がんが1,000人当たり約1件増え、卵巣がんによる死亡が1,700人当たり約1件増えることになる」と指摘。

 共同研究者の一人のデーム・バレリー・ベラル氏(オックスフォード大学教授)は「5年未満のHRTでも卵巣がんリスクが確実に上がったという結果は、ほとんどの女性が短期間のHRTを受けている現状や、ガイドライン改訂の動きにも関係してくることだ」と述べている。

 一方、米国立がん研究所のニコラス・ウェンツェンセン氏らは、同誌の付随論評(電子版)で「今回の研究ではHRTの用量を評価しておらず、対象研究の卵巣がん診断年の中央値も2001年と、HRTの使用パターンが変化する前だ。そのため、今回の結果からは最低用量を最短期間でHRTを受けるよう推奨する現行の勧告が妥当かどうかはなお不明だ」と述べている。

(編集部)

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