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でも...やっぱりワクチンって高いですよね?

 2015年03月20日 10:30

〈編集部から〉
 十分な治療法がなく、死亡や重い障害を残す感染症は少なくありません。これまで人類とウイルス、細菌との闘いが繰り広げられてきた中で、最も強力な武器の一つといわれるのがワクチンです。「ワクチンは飲み水の浄化に次いで、多くの子どもの病気を防ぎ、命を救ってきた"医薬品界のスーパースター"」と話すのは、小児感染症の専門家、長崎大学小児科の森内浩幸教授。しかし、普段の診療において、子どもに付き添うママやパパ、おじいちゃん、おばあちゃんたちのワクチンに対する不安や誤解は根強いと感じることも少なくないようです。このシリーズでは普段、医師にはなかなか聞きにくいワクチンに関する5つの疑問を、6回にわたって解説してもらいます。森内教授は「正しい知識を持って、子どもを守るワクチンを上手に利用してほしい」と呼びかけています。最終回は「でも...やっぱりワクチンって高いですよね?」。

「ワクチンと違って医療費は無料」ではない

 日本ではまだ定期接種になっていないロタウイルスワクチンは、規定の回数を接種すれば総額2万円以上が財布から飛んでいきます。他にも、本当は接種して欲しいのにまだ定期接種になっていないワクチンが幾つもあって、これらも確かに安くはない金額です。でも、ワクチンで得られる効果を考えると本当に高いのでしょうか?

 私がよく話すのは「家の押し入れには子どもが飽きてしまったゲームソフト、たくさんありませんか? その総額は何万円ですか?」。ワクチンもお金がかかりますが、ゲームソフトと違って子どもや周囲の人を感染症から守ってくれます。

 「そうは言っても、ロタウイルス胃腸炎は嘔吐(おうと)や下痢で済むことも多いようだし、通院や入院の医療費は無料。ワクチンはやっぱり自己負担額が大きい」と考える人もいるかもしれません。それも誤解です。無料と思っている医療費は、皆さんの税金で賄われています。

一度かかると医療費抜きで財布から4万円消える

 日本にロタウイルスワクチンが導入される際、小児科の先生たちがワクチン代と医療費や家計のバランスを計算しました。

 それによると、ロタウイルス胃腸炎の発症1回につき、医療費以外にも通院のための交通費や、度重なる下痢で交換が増えるおむつ代、吐いた物で汚れた衣服類の洗濯代、脱水を防ぐ経口補水液代、さらに子どもの看病のために親が仕事を休むことによる労働損失額などを合わせると、医療費とは別に財布のお金が約4万円減ってしまうのです。

 日本国内で1年に生まれる100万人の子ども全員がロタウイルスワクチンを接種すると、年間200億~300億円かかります。これに対し、ワクチンを接種しなかった場合の直接・非直接医療費の総額は年間約540億円。ワクチンの費用を上回ると試算されています。ワクチンを使用することで個人の家計だけでなく、国のお金が数百億円節約できるのです。

1歳過ぎに「うっかり忘れがち」なワクチンとは

 また、最近は毎年のようにワクチンスケジュールが新しくなり、複雑になっています。乳児健診や予防接種のラッシュが一段落し、うっかりワクチンを忘れがちな1歳過ぎの子どもがいるお父さんやお母さんに、特に接種を考慮して欲しいワクチンは表の通りです。

 日本小児科学会は、多くの子どもたちをワクチンで防げる感染症(VPD)から守るために、さまざまなワクチンの接種を推奨しています。予防接種法の改正で標準的な接種時期を過ぎていても、定期接種として自己負担なく接種できるワクチンも増えました。

 また、自己負担があっても、是非受けておいた方が良い任意接種のワクチンもあります。かかりつけの先生に、母子手帳を見せて相談してみてください。また小児科の先生も、診察の際は母子手帳の予防接種欄を確認してください。そして、打ち忘れているワクチンがあれば、ぜひ接種を勧めてください。

(まとめ/坂口 恵)

森内浩幸(もりうち ひろゆき)

 1984年、長崎大学医学部卒業。国立仙台病院臨床研究部レジデント、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)研究員、米国立衛生研究所(NIH)臨床スタッフなどを経て、1999年から長崎大学医学部小児科学主任教授。厚生労働省の予防接種・ウイルス感染対策関連の委員なども歴任し、子どもや女性の感染症対策に力を入れている。

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