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なぜ相次ぐ? ジェルボール型洗剤による子供の事故

 2015年03月23日 10:30

 洗濯用ジェルボール型洗剤(パック型液体洗剤)は、計量の必要がなく、液だれもしないことなどで人気を集めている。その一方で、ジェルボール型洗剤による子供の事故が相次いで報告されているようだ。消費者庁は3月18日、この洗剤を乳幼児の手の届かないところで保管するよう注意を呼びかけた。これまでは年間24件程度だった洗剤の事故報告だが、ジェルボール型洗剤発売後は10カ月間で152件も報告されており、0~3歳が7割以上を占めているという。従来の洗剤による事故と何が違うのだろうか。

通常の洗剤より重い症状

 ジェルボール型洗剤は、洗濯1回分のジェル状洗剤をフィルムで密封したもの。計量や液だれなどの面倒から解放されるため海外では人気で、日本でも昨年4月に生活用品大手P&Gジャパンから2製品が発売された。国内での人気も高く、『日経トレンディ』の「2014年ヒット商品ベスト30」の4位、『リビング新聞』の「第21回助かりました大賞」では家庭用品部門の金賞を受賞している。

 消費者庁の調査によると、ジェルボール型洗剤の発売から10カ月間で152件(誤飲、目や皮膚についた)の事故情報が寄せられている。発売以前の2012年度に厚生労働省が行った調査では、粉末・液体洗剤による健康被害(皮膚障害と誤飲)は年間24件。ジェルボール型洗剤が新製品という背景も考えられるが、これまでより明らかに増えている。

 ジェルボール型洗剤の事故で目に付くのが「洗剤が目に入った」というもの。これまでの事故報告のうち46件(30.3%)を占めている。液体洗剤がフィルムで包まれているためぷにゅぷにゅしており、子供のおもちゃにも似ている。消費者庁への事故報告では、3歳の女の子が握ったところ破裂して中身の洗剤が目に入り、医療機関を受診した事例が紹介されている。フィルムは水に溶けるように作られているため、ヨダレなどでぬれた手で握ると破れやすく、時には中身が勢いよく飛び出すこともあるようだ。

 この点は大人でも注意が必要なようで、洗濯のたびに湿った手で洗剤を出すうちに箱の中の洗剤同士がくっついてしまい、それを剥がそうとしてフィルムが破損し、飛び出した洗剤が目に入って受診した90歳代の女性の事例もあった。

 さらに、ジェルボール型洗剤による事故で気を付けなければならないのが、中身が「濃縮された洗剤」であること。日本小児科学会は「通常の洗剤を誤飲した程度では見られない頻回の嘔吐(おうと)、呼吸障害、意識レベルの低下、角膜損傷が報告されている」と分析している。前出の3歳の女の子の事故では「目の表面が洗剤で覆われてしまった」と報告されるなど、洗剤の粘り気がかなり高いようだ。

目に入ったら「10分以上水で洗う」

 烏山眼科医院(東京都世田谷区)の福下公子院長は、洗剤が目に入り、水で洗い流す際の注意として以下の3点を紹介。目を洗ったら、必ず製品の成分が分かる外箱や袋などを持参の上、眼科医を受診するよう勧めている。

  • すぐに水で10分以上洗う
  • 洗う際は洗剤で眼の角膜が弱くなっている恐れがあるので勢いの強い水で洗わない
  • まぶたなど目の周囲にも洗剤がついた場合にはぬれたタオルで丁寧に拭き取る。決して強くこすらない

 消費者庁はこれに加え、口に入ってしまった場合は「できれば口をすすがせ、水または牛乳を少し飲ませて医療機関を受診する。吐いたもので喉を詰まらせる可能性があるので無理に吐かせない」、皮膚についた場合は「すぐに大量の流水で洗う。付着した衣服は脱ぐ」よう求めている。

お菓子のような見た目が子供引きつける

 今回、消費者庁がこうした呼びかけが行ったのは、経済協力開発機構(OECD)が展開する国際啓発キャンペーンが背景にある。OECDはジェルボール型洗剤について「子供の目には魅力的に映る製品であり、取り扱いや保管をきちんとしなければ深刻な危険を伴う」としている。事故件数は日本より普及している欧米諸国でさらに多く、気道熱傷(化学物質による喉や気管、肺などの障害)や呼吸困難、角膜炎症のほか、米国では死亡例も1件報告されている。

 日本小児科学会は、国内で販売されているジェルボール型洗剤が海外と同じ成分かは定かではないが、濃縮洗剤が使用されていること、頻回の嘔吐が見られていることなどから、欧米と同様の問題が生じる可能性があるとの見解を示している。

 また、「子供の手の届かないところに置いてください」との注意表示や、乳幼児にとって開けにくいようなフタを採用しているにもかかわらず、実際に事故が起きているとし、お菓子のような見た目が子供を引きつける一因と指摘。その上で、誤飲予防には注意喚起だけでなく「色や匂いを付けない、かじっても容易に破れないフィルムで覆うことなどが対策として考えられる」と、企業側の事故防止の工夫が必要と分析している。

(坂口 恵)

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