加齢に伴う膝の痛み...変形性膝関節症かも
2015年03月27日 16:00
「最近、立ち上がる時に膝が痛い」―それは変形性関節症かもしれない。変形性関節症とは、さまざまな原因により関節の痛みや腫れが生じる病気だ。関節の動きを滑らかにしたり、体重がかかる衝撃を和らげたりするクッションの役割をする軟骨が、加齢とともに徐々にすり減ってしまい、酷くなると骨がもろくなって関節が壊れてしまう。主に、膝・股関節・肘・肩といった、体重がかかったりよく動かしたりする関節に起こりやすい。加齢そのものが原因である場合や、関節リウマチなどの病気が原因で起こるものもある。3月19日に神戸医大学整形外科で開催されたリウマチ教室で、同科の三浦靖史准教授は、変形性関節症の中でも特に多くの人が悩む変形性膝関節症について解説。「加齢が原因で関節が痛む人には体重が重い人が多い。まずは減量が大切」とアドバイスした。
40歳以上の半数、75歳以上の8割が膝で悩んでいる
膝関節は、大腿(だいたい)骨(太ももの骨)・脛(けい)骨(すねの骨)・膝蓋(しつがい)骨(膝の皿の骨)の3つから構成される。膝関節は人の体で最も大きい関節で、立ったり歩いたりするときに大変重要な役割を担っている。この膝関節が老化すると、「歩き始めなど運動を開始する時に痛い」「体重がかかると痛い」「正座ができなくなる」などの症状が現れる。さらに、O(オー)脚など変形が進むと、安静にしても次第に痛みが取れなくなってしまう。40歳以上の50%に、75歳以上では80%に見られる。
そもそも、変形性関節症は女性に多い。その理由として、男性に比べ女性は体脂肪が1割多く、女性ホルモンの影響などから関節を構成する組織が柔らかいなど、関節に負担がかかりやすいほか、女性の方が長生きであることも有病率を上げているという。
まずは太ももの筋力アップ、そして減量
変形性膝関節症になったらどうしたらよいのだろうか。「まずは、膝関節を支える太ももの筋力を鍛えましょう」と三浦准教授は助言する。ウオーキングでは膝関節に負担がかかって逆効果になることもあるので、膝に体重がかからないトレーニングが望ましいという。「最も効果的なのは水中歩行だが、近くにプールがない、歩行できるスペースが取れないなど、実践が難しい場合、椅子に座ったり寝転んだ姿勢での足上げ運動などがよいでしょう」(三浦准教授)。
関節リウマチなどの関節が壊れる病気ではなく、加齢が原因の変形性膝関節症を抱える人には、体重が多い"ふくよかな人"が目立つと三浦准教授は言う。「歩くだけで膝関節には体重の3~4倍の負荷がかかるので、少しでも減量するだけで効果は絶大」だという。
主治医と相談して装具や薬も上手に活用
O脚が強い人では、靴にO脚を矯正する中敷きを入れたり、膝関節を支えるサポーターを利用するなどの装具療法を行うことがある。「薬局などで市販されているものもあるが、サポーターは使い方によっては関節の動く範囲を制限したり、筋力の低下につながる恐れもあるので、主治医と相談して使うことをお勧めします」(三浦准教授)。
痛みがつらい時には痛み止め(消炎鎮痛薬)を使うことも効果的だ。痛み止めの薬は体に悪そうだから...と服用を避ける人も少なくないが、痛みがひどくて動かずに過ごすと、足の筋力が落ちてさらに動けなくなるという悪循環に陥ってしまう。最近では、胃や腎臓に負担の少ない新しいタイプのCOX-2阻害薬という消炎鎮痛薬があるので、主治医と相談して上手に痛み止めを使うことも大切だ。
また、ヒアルロン酸を膝関節内に注入してすり減ってしまった軟骨成分を補う注射療法もある。ヒアルロン酸のサプリメント(栄養補助食品)で関節の動きを改善できるのだろうか。「ヒアルロン酸は食べても消化されるだけ。一定の効果があるのは関節の中に直接入れるからなので、サプリメントを取っても意味がありません」(三浦准教授)
(長谷川 愛子)
神戸大学整形外科リウマチ教室
神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。