40代の定期的なマンモ検診、やはり"推奨しない"―米国
2015年04月30日 06:00
米政府の専門家諮問機関である米国予防医療作業部会(USPSTF)は4月21日、6年ぶりとなる乳がん検診に関する勧告の改訂草案を公表し、40歳代の定期的なマンモグラフィー検診(X線による乳がん検診)について、前回に引き続き"推奨しない"とした。ただし、表現は「40歳代に検診を実施すべきでないことを示しているのではなく、個別の判断を重視したもの」と付け加えており、前回の勧告で当初明記していた「40~49歳では定期的なマンモグラフィー検診は実施すべきでない」の文言は削除。前回の勧告に対して医学会などから反発を受けていたが、それに配慮した表現の変更とみられる。
「不利益より利益重視する女性ではOK」
マンモグラフィー検診に対してUSPSTFは、2009年の勧告で、それまで推奨していた40歳代の定期的な検診を「推奨しない」と発表。推奨度も「B」から「C」へと格下げした。これに対し、米国がん協会など複数の医学会が「USPSTFの勧告に従えば乳がん死を増加させてしまう」と反発。それを受けてUSPSTFは勧告の表現を修正したものの、推奨度は「C」のままだった。
今回公表された草案の概要は以下の通り。50~74歳では2年に1回のマンモグラフィー検診の実施を推奨する一方(推奨度「B」)、75歳以上では、検診による利益と不利益の評価をするにはエビデンス(根拠となる研究結果)が不十分との見解が示され、2009年の勧告から大きな変更は見られなかった。
40~49歳が定期的に行うことに関しては、前回の勧告では当初「実施すべきでない(do not screen routinely)」と明記していたのに対し、今回の草案では「不利益よりも利益を重視する女性は40~49歳でも2年に1回のマンモグラフィー検診を開始することを選択してもよい」と、個人の考えや家族歴などの危険因子を考慮した上で個別に判断することの重要性が前面に打ち出された。ただし、推奨度は今回も「C」のままだ。
・50~74歳
2年に1回、マンモグラフィー検診を実施することを推奨(グレードB)
・40~49歳
50歳を迎える前にマンモグラフィー検診を開始すべきか否かについては個別に判断する。不利益よりも利益を重視する女性は40~49歳でも2年に1回のマンモグラフィ検診を開始することを選択してもよい(グレードC)
・75歳以上
現時点では75歳以上の女性に対するマンモグラフィー検診による利益と不利益のバランスを評価するためのエビデンスは不十分(グレードⅠ)
・トモシンセシス(3Dマンモグラフィー)検診(全年齢層)
現時点では乳がん検診としてのトモシンセシス検診の利益と不利益を評価するためのエビデンスは不十分(グレードⅠ)
・乳腺密度の高い女性
現時点では乳腺密度の高い女性に対する乳がん検診で、超音波検査やMRI、トモシンセシスなどの画像診断装置による検診を追加することによる利益と不利益を評価するためのエビデンスは不十分(グレードⅠ)
英国やカナダでは積極的推奨されず
USPSTFは「40~74歳の女性がマンモグラフィー検診を行うことで、乳がん死亡率を低減できる十分なエビデンスがある」とした上で、「回避できる乳がん死亡数は60~69歳で最も多く、40~49歳で最も少ない」と説明。ただし、家族歴のある40~49歳の女性は家族歴のない50~59歳の女性とリスクが同等だとしている。
また、全ての年齢層でマンモグラフィー検診による不利益の恐れがあることを指摘。最大の不利益として過剰診断や不要な治療が挙げられ、偽陽性(乳がんでないのに乳がんと判定されること)の頻度も高いため、受ける必要のない痛みを伴う検査が実施される可能性もあるとしている。
米国がん協会や米国産科婦人科学会などは、40~49歳にも定期的なマンモグラフィー検診を推奨しており、前回の勧告に対して強く反発した。わが国でも、日本乳癌(がん)検診学会が「米国のデータに基づいた判断であり、日本にそのまま適用することはできない」「わが国における科学的根拠に基づいた推奨度の改訂を行うまでは、当面現行の推奨を継続することが妥当である」などの見解を示した声明文を発表している。
なお、アジアでは欧米に比べて閉経前乳がんのリスクが高いことなども踏まえ、日本や韓国などでは40歳から2年に1回のマンモグラフィー検診が実施されている一方、英国やカナダ、オーストラリアでは、同年齢層に対する定期的なマンモグラフィー検診は積極的には推奨されていない。
(あなたの健康百科編集部)