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"バイアグラで皮膚がん"は本当か―専門家が検証

 2015年07月01日 06:00

 昨年、「バイアグラ」(一般名・シルデナフィル)を服用した男性で、皮膚がんの一種であるメラノーマになる危険性が服用していない人の2倍高かったことが、米内科専門医学誌「JAMA Internal Medicine」(2014; 174: 964-970)に報告された。これを受け、米ニューヨーク大学医学大学院のステーシー・ローブ准教授ら国際共同研究グループは、スウェーデンの男性2万人以上を対象に検証。その結果、バイアグラを含むPDE阻害薬の服用でメラノーマになる危険性は1.2倍と、昨年の報告よりも軽度ながら関連が認められたことを、姉妹誌の「JAMA」(2015; 313: 2449-2455)に報告した。ただし、ローブ准教授らは、バイアグラをメラノーマの原因として捉えることには大きな疑問が残るとしている。その理由とは...?

ED患者は2025年に3億人突破

 たかがED(勃起不全)治療と侮ってはいけない。2025年には、世界のED人口は3億2,200万人に達すると試算されており、治療薬として最も多く処方されている「バイアグラ」などのPDE5阻害薬が死に至る可能性がある皮膚がんのメラノーマを引き起こすとすれば、大きな問題になるだろう。

 今回の研究では、2006~12年にスウェーデンのデータベースに登録されたメラノーマ患者4,065人(メラノーマ群)と、メラノーマでない2万325人(対照群)を対象に検討した。対象はほとんどが白人男性で、PDE阻害薬(バイアグラ、レビトラ、シアリス)を処方されたことがある人はメラノーマ群で11%(435人)、対照群で8%(1,713人)だった。

 分析の結果、PDE5阻害薬を服用していた人では、服用していなかった人に比べてメラノーマになる危険性が1.21倍に上がっていた。しかし、リスクが上昇していたのは処方回数が1回だけだった人だけで(1.32倍)、2回以上の人では認められなかった。

 また、PDE5阻害薬の服用は、ステージ0~Ⅰの初期段階のメラノーマになる危険性と関連していたが(それぞれ1.49倍、1.21倍)、ステージⅡ~Ⅳの進行したメラノーマとは関連が認められなかった。さらに、短期間と長期の服用、3種類のPDE5阻害薬の間で差はなかったという。

因果関係が疑わしい理由

 2014年の報告はアンケート調査から導き出したもので、メラノーマ患者も142人と少なく、そのうちバイアグラを服用していたのは14人のみだった。一方で今回の研究は、メラノーマ患者が4,000人以上、PDE5阻害薬を服用していたのは435人(うちバイアグラは275人)で、調査の精度はより高いと言える。

 その今回の研究結果でも、メラノーマになる危険性が上がっていたのは1回処方された人だけで、2回以上処方された人では認められなかった。もし、バイアグラがメラノーマに関係するのならば、普通は服用量が多いほどリスクが上がるはずだ。また、進行したメラノーマとの関係も認められなかった。

 これらのことから、ローブ准教授らは「メラノーマになりやすいという結果の背景には、収入や社会的地位、生活習慣などが関連している可能性がある」と指摘している。今回の研究でも、PDE5阻害薬を服用していた人はそうでない人と比べて高学歴・高収入で、学歴や収入はメラノーマと関連することが過去の研究で指摘されている。

 こうした結果を総合して、ローブ准教授らは「PDE5阻害薬の服用によるメラノーマを危惧するより、むしろ日焼けを避けるなど皮膚がんの予防を常に心がけるべき」と勧めている。

(あなたの健康百科編集部)

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