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"鼻風船"で中耳炎を治療、その効果は? 英研究

 2015年08月04日 06:00

 子供が高熱を出して耳を気にしていると思っていたら、耳の穴から膿(うみ)が出てきた―子育てでよくある光景だ。こうした中耳炎(滲出=しんしゅつ=性中耳炎)を治す方法の一つに、医療器具の鼻風船「オトヴェント(Otovent)」があるのはご存じだろうか。薬や手術が不要なため、子供にとって優しい治療法となっている。しかし、その効果についてはエビデンス(根拠となる研究結果)が不足していたという。こうした中、英サウサンプトン大学医学部のイアン・ウイリアムソン准教授らは「オトヴェント」の有効性を検討する研究を実施し、その結果を7月27日発行のカナダ医師会誌「CMAJ」(電子版)に報告した。

体にも財布にも優しい治療法

 子供は耳の一番奥にある耳管が短いので、鼻から細菌などが侵入しやすい。そのため、風邪をひいたときなどに中耳炎を起こしやすいとされている。かかったばかりの状態を急性中耳炎、それが治った後に耳だれを起こす状態を滲出性中耳炎、急性中耳炎が3カ月以上治らない場合を慢性中耳炎という。子供は自分の症状を伝えられないことが多いため、保護者は耳だれを発見して初めて中耳炎に気づくというケースが少なくない。

 治療は薬が中心だが、薬が効かない場合、鼓膜を切ったり、鼓膜にチューブを置いたりしてたまった滲出液(耳だれ)を出す外科治療が行われる。それ以外の方法が、医療用鼻風船のオトヴェントだ。

 オトヴェントは、鼻で風船を膨らますことで耳管を開き、中耳の気圧を外気圧と同じにして中耳の状態を改善させる医療機器。中耳炎だけでなく、飛行機に乗ったときの耳の詰まり(航空性中耳炎)の改善や、スキューバダイビングの耳抜きの練習にも活用できる。子供の体に優しいだけでなく、費用が安いため保護者の財布にも優しいのが特徴だが、効果についてはエビデンスが不十分だったという。

 ウイリアムソン准教授らは今回、滲出性中耳炎で医療機関43施設を訪れた4~11歳の子供320人を対象に、(1)標準的治療+オトヴェント(1日3回膨らませるのを1~3カ月実施)、(2)標準的治療のみ―のいずれかに半数ずつ分け、中耳炎への効果を比べた。

普通の風船では意味なし?

 その結果、オトヴェントを使った子供たちで鼓膜が改善した割合が高かった。また、生活の質の改善度も高かったという。このことから、ウイリアムソン准教授らは「滲出液の解消と、子供と家族の生活の質の改善に有効」と結論付けた。

 オトヴェントはスウェーデン・アビゴ社の製品で、日本では名優が輸入・販売。医療機関で処方されるほか、薬局や同社公式サイトで販売されている。なお、アビゴ社によると、普通の風船にオトヴェントのノーズピースを付けて膨らました場合の中耳圧の改善は確認されないという。

(あなたの健康百科編集部)

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