20~24歳女性の「梅毒」昨年の2.7倍...全体でも過去最多
2015年11月24日 20:00
性感染症の梅毒に感染した人の報告が、今年の第1週から第43週(2014年12月29日~2015年10月25日)で2,037人を数え、現在の調査方法になった1999年以降ですでに最多となったことが、国立感染症研究所の調べで分かった。特に若い女性での増加率が高く、20~24歳女性で昨年同時期の2.7倍に上っているという。感染研は、不特定多数の人との性的接触、コンドームの不適切な使用などが感染の危険性を高めるほか、免疫が得られないために何度も感染することを警告。感染が疑われたら早めに受診し、必要に応じて性行為のパートナーにも告知・受診を促すことを勧めている。
梅毒とは?
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌に感染することで引き起こされる病気。感染すると3~6週間の潜伏期間を置いて、性器など感染した場所に大豆くらいの硬いしこり(初期硬結)やそれが破れて潰瘍(硬性下疳=げかん)ができる。数週間~数カ月がたつと細菌が全身に広がり、皮膚や粘膜に発疹が発生する。
ここまでの症状(早期顕症梅毒)で困るのが、痛みもかゆみもなく、自然に消えることもあるという点だ。しかし、このまま放置していると、やがて皮膚から筋肉、骨が破壊されていき、最終的には神経や心臓、血管などが侵されることになる(晩期顕性梅毒)。
感染経路は、主に性的な接触。早期感染者の患部から出ている体液(滲出=しんしゅつ=液)に含まれる梅毒トレポネーマが、粘膜や小さな傷口から侵入してくる。また、妊婦が感染していると、胎盤からおなかの赤ちゃんにうつり、流産や死産のほか、先天梅毒を引き起こす可能性があるという。なお、母乳からは感染しないとされている。
「オーラルセックスでも感染」
梅毒の報告は1948年以降に大きく減ったが、2010年を境に621人、828人、875人と増えており、2013年には1,000人を突破(1,228人)、2014年は1,671人とさらに報告数を伸ばした。今年は10月25日までで2,000人を超え(男性1,463人、女性574人)、昨年同時期の1.5倍。女性は報告数こそ少ないものの昨年同時期の2倍(男性は1.4倍)で、特に20~24歳女性では同2.7倍にも上った。10月25日~11月8日でも106人が報告されており、このままいくと2013年の2倍になる可能性もある。
感染研によると、2010~2013年は男性の同性間性的接触が増えていたが、昨年から今年にかけては男女の異性間性的接触の増加が続いているという。同性間で性的接触して感染した男性が、女性と性的接触し、さらにその女性と性的接触した男性、さらにその男性と性的接触した女性...というように、感染者が増えているのかもしれない。
感染研は「不特定多数の人との性的接触はリスク因子であり、その際にコンドームを適切に使用しないことがリスクを高めること、オーラルセックスやアナルセックスでも感染すること、梅毒は終生免疫を得られず再感染すること」をポイントとして紹介。感染が疑われる症状が見られた場合、早期に医師の診断・治療を受けること、梅毒と診断されたら必要に応じた性行為パートナーに対する啓発、検査を行うことが重要とアドバイスしている。
弊社医師向け情報サイト「Medical Tribune」には、医師会員から「梅毒が増えているということは、同時にHIVやHBV、HCVも増えている可能性がありますね。該当する患者層は受診率がそもそも低いことが予想されますし、潜在的にはもっと患者数はいるでしょうね」「梅毒は過去の病気と思われがちではないでしょうか」「性感染症の啓もうは学校での教育はじめ重要だと思います」といったコメントのほか、「梅毒を診察した経験のある若い医師は少ないのでは?」「梅毒に接する機会が減っているのでよく勉強しておきます」などの声も寄せられている。
(小島領平)