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なぜか体中が痒い...原因は肝臓病かも

 2016年03月18日 06:00

 "沈黙の臓器"とも呼ばれる肝臓は、異変が起きても本人は気付きにくいとされている。しかし、当の肝臓がその異変を密かに伝えてくれている場合もある。そのうち、意外に多いのが皮膚の痒(かゆ)みだ。「体がだるい」「手足がつる」に次いで「体が痒い」ことを自覚症状として挙げる肝臓病患者は多く、これらが3大症状となっているという。東都医療大学ヒューマンケア学部の鈴木剛教授らは3月15日、東京都で開かれた大日本住友製薬主催のプレスセミナーで、肝臓病と痒みについて講演し、肝臓病患者の多くが痒みに苦しんでいる実態や、「見た目に異常がなくても全身が痒い」など肝臓病による痒みの特徴について説明した。

3人に1人が痒みあり

 全身の痒みは肝炎や肝硬変、肝臓がんなど、肝臓の異変の症状として珍しくないというのは、医師にもあまり知られていない。特に痒みが出やすいのは「原発性胆汁性肝硬変(PBC)」で、痒みを訴える患者の割合は7割に上るとの報告もある。

 さらに、肝炎の患者でも、痒みの自覚症状がある人は多い。鈴木教授によると、肝炎患者2,138人を対象に日本肝臓病患者団体協議会が実施した調査では、患者が訴える自覚症状として最も多い3つの症状に「体がだるい」(25.5%)や「体力が低下」(22.9%)と並んで「皮膚のかゆみ」(22.4%)が入ったという。

 また、虎ノ門病院(東京都港区)肝臓内科の熊田博光分院長の調査では、肝臓病患者342人のうち痒みがある割合は原発性胆汁性肝硬変(54.5%)や肝臓がん(43.2%)で特に高かったが、C型肝炎やアルコール性肝炎でも30%を超え、肝臓病全体では35.7%を占めていた()。

 

 こうして、肝臓病患者の3人に1人に痒みがあり、中には痒みで眠れないほど日常生活で深刻な問題を抱えている人もいることが分かった。では、どのような痒みで肝臓病を疑うべきなのだろうか。鈴木教授は、肝臓病が原因の痒みの特徴として、以下を挙げた。

  • 痒くて眠れない
  • 全身が痒い
  • 見た目には異常がないにもかかわらず痒い
  • 薬が効きにくい
  • かいても痒みが治まらない
  • 見た目には異常がなくても痒い

 なお、高齢になると皮膚が痒くなる「老人性皮膚掻痒症」が増えるが、肝臓病による痒みは全ての年齢層で見られるという。

アレルギーや乾燥による痒みとは違う

 特徴の一つとして挙げられているように、肝臓病による痒みには、普通の痒み止め(抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、保湿薬、ステロイド薬)が効かない場合が多い。それは、アレルギーや乾燥肌によるの痒み(末梢性)とは異なり、肝臓病による痒みが脳や脊髄などの神経を伝った「中枢性」のものだからだ。ただ、鈴木教授らによると、こうした従来の治療では改善しない慢性肝臓病患者の痒みに対しても効果が期待できる「選択的オピオイドκ受容体作動薬」と呼ばれる薬が、昨年5月から使用できるようになったという。

 講演の中で、熊田分院長は「肝臓病の早期発見とともに、(かゆみの治療などによって)患者の生活環境を向上させていくことも重要になっていくのではないか」との見方を示した。

(あなたの健康百科編集部)

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