夫や妻、恋人との死別で心臓病リスク1.6倍
2016年04月18日 06:00
夫や妻、恋人といったパートナーと死に別れた人は、その1年間以内に心臓病(心房細動)にかかりやすいことが、デンマーク・オーフス大学公衆衛生学のサイモン・グラフ氏らが約10万人を対象に実施した調査から示された。特に、亡くなる前までパートナーの健康状態に大きな問題がなく、死が予想外だった場合、死別後1カ月間のリスクが約1.6倍に高まることが分かったという。詳細は、4月5日発行の英医学誌「Open Heart」(電子版)に掲載されている。
最もリスク高まるのは死後2週目
心房細動は、心臓の「心房」と呼ばれる部分が小刻みに震え、心臓が正常に働かなくなる「不整脈」の一種。血液の流れがよどみ、血栓(血の塊)ができやすくなるため、脳卒中の原因になることもある。この心房細動を発症するきっかけの一つとして、以前から「感情的なストレス」が注目されていた。
「感情的なストレス」をもたらす人生の出来事として思い浮かぶのは、夫や妻、恋人といったパートナーとの死別だ。そこでグラフ氏らは今回、実際にパートナーとの死別が心房細動の危険性にどの程度影響するのかを調べるため、1995年から2014年までに心房細動と診断された8万8,612人と、診断されたことのない88万6,120人のデータを合わせて分析した。その結果、パートナーの死を経験した人では、経験していない人に比べて死別後1年間は心房細動を発症するリスクが高く、特に死別後8~14日後はその危険性が1.9倍に達することが分かったという。
さらに,生前の持病や年齢などによる影響を含めた分析からは、パートナーの健康状態が悪かった場合には死別後に心房細動リスクが高まることはなかったが、健康状態が良く、死が予想外だった場合には同リスクが1.57倍に高まることが示された。
グラフ氏らは「なぜパートナーとの死別が心房細動の発症に影響するのか、現時点でははっきりとは分からない」としながらも、「突然の強いストレスが心臓のリズムを乱し、炎症に関係する化学物質の放出を促進している可能性がある」との考えを示してる。また、今後の研究課題として「パートナーとの死別よりもストレスの度合いは低いが、日常的により頻繁に経験するような出来事でも心房細動の発症に関係するかどうか調べること」を挙げている。
(あなたの健康百科編集部)