車中泊でのエコノミークラス症候群はこうして予防
2016年04月20日 06:00
いまだ余震が続く熊本県では、自宅に戻れず自家用車で寝泊まりを続ける被災者も多い。しかし、狭い車内で長時間が過ごすことで血管内にできた血の塊が血流を妨げる「静脈血栓塞栓(そくせん)症」、いわゆるエコノミークラス症候群にかかりやすくなることが知られている。さまざまな事情から車中泊を続けざるをえない人も多い中、エコノミークラス症候群を予防するには何ができるのか。日本循環器病学会など血栓症に詳しい専門医が所属する複数の学会が連名で、車内での姿勢や運動などの対策をまとめ、公式サイトで公表した。
足首の運動やふくらはぎのマッサージを
車中泊によるエコノミークラス症候群は、2004年に起きた新潟県中越地震でも大きな問題になった。この時も、自宅に戻れず、さまざまな事情で避難所では生活できない被災者の多くが、自家用車で寝泊まりしていた。しかし、こうした被災者の中にはエコノミークラス症候群によって命を落としてしまった被災者も出た。今回、熊本県でもエコノミークラス症候群による死亡例が報告されているが、中越地震での例と共通しているのが、「朝起床し、車から降りると同時に倒れこみ、死亡が確認された」という点だ。そこで今回、日本循環器学会などエコノミークラス症候群の診断や治療に詳しい複数の学会は、やむをえず車中で寝泊まりせざるを得ない被災者に向け、各学会の公式サイトで以下に注意してほしいと呼びかけている。
- 適切な指導の下,弾性ストッキング(強い弾力で脚を圧迫するストッキング)を装着する
- 長時間自動車のシートに座った姿勢で眠らない
- 時々足首の運動を行う
- ふくらはぎのマッサージを行う
- 十分な水分を補給する
- 可能であれば避難所で簡易ベッドを使用する
なお、中越地震でも被災者の診察に当たった経験がある新潟大学大学院医歯学総合研究科呼吸循環外科講師の榛沢和彦氏は,小社の取材に対し「閉塞性動脈硬化症がある場合や脚をけがした場合など例外はあるが、基本的に全ての車中泊をしている被災者に弾性ストッキングを着用してもらうことが必要」と訴えた。
弾性ストッキングについては,今回の予防策を公表した学会が現在メーカーに援助を依頼し,被災地に届ける手配を済ませているという。弾性ストッキングには着脱方法があり,適正な使い方を指導する弾性ストッキング・コンダクターがいる。また、日本静脈学会の弾性ストッキング・コンダクター養成委員会では弾性ストッキングに関する相談をメール(stocking@minamikyousai.jp)で受け付けている。
(あなたの健康百科編集部)