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前田健さん襲った「虚血性心不全」とは?

 2016年04月26日 20:45

 東京・新宿の路上で倒れ、4月26日深夜に亡くなったお笑いタレントの前田健さん。所属事務所は、死因は虚血性心不全と発表した。前田さんを襲った虚血性心不全とは、心臓の血管が詰まって十分な血液が行き届かず、止まってしまう病気の総称。狭心症や心筋梗塞が代表的で、急な胸の痛みが特徴だ。胸の痛みを感じたら、症状は軽くても重い病気の場合があるので、なるべく早く専門医にかかることが勧められる。

勘違いで手遅れも

 急な胸の痛みは、心臓や心臓を包む心膜の病気、胸の大動脈の病気、肺や肺を包む胸膜の病気などいろいろな病気によって引き起こされる。その中でも重症の狭心症、心筋梗塞、解離性大動脈瘤(りゅう)、大動脈瘤の切迫破裂、肺梗塞などは、一刻も早く救急車を呼んで心臓を専門とする医療機関にかかる必要がある。命の危険があるので、できれば心疾患集中治療室(CCU)のある施設がよい。

 心臓の筋肉に血液を送る血流が狭心症では一時的に著しく不足して起き、心筋梗塞はその血流が止まり、心臓の筋肉が部分的に死んでしまったものだ。狭心症の痛みは大抵、胸を圧迫され、締めつけられるように胸の真ん中から左側が痛み、喉から左肩、左腕にかけても痛みが広がる。これが2、3分から長くて15分ほど続く。狭心症のうち、冷たい空気やストレス、運動をきっかけとして起こる安定狭心症や、安静時や睡眠中に起こるものは命の危険はない。しかし、心筋梗塞になりがちな重症の狭心症もあるから軽く考えることはできない。

 心筋梗塞の痛みは、よく「死ぬかと思うような」とか「強く圧迫されたような」「焼け火ばしで胸を引っかき回されたような」と表現される。胸の中央から左胸にかけて広い範囲で痛み、しばしば喉から左肩、左腕にも痛みが広がり、30分から2、3時間続くことが多い。

 ただ、中には胃や喉、顎が痛むだけの心筋梗塞もあり、勘違いしてこれを和らげようと入浴や体操をしたり、病院へ行ってもほかの科で受診して手遅れになるケースもあるので要注意だ。

心肺蘇生術覚えて

 解離性大動脈瘤は、心臓から全身に血液を送る大動脈の血管壁が裂けたもので、その痛みは最も激しいといわれる。胸の真ん中あるいは背中で激しく痛み、痛みは下のほうへ移動する。2、3時間以上、時には2、3日間続くこともある。大動脈瘤切迫破裂は、大動脈にできた血管の瘤(こぶ)のようなものが急に膨らんで起きたもので、背中に激痛があることが多い。

 肺梗塞は、肺への血流が止まって肺の組織が死んでしまうもので、胸の脇が鋭く刺すように30分以上痛む。息苦しさを伴い、咳(せき)や深呼吸で痛みが強くなることが多い。寝たきりの人や普段から長時間座っている人に起こりやすい。

 胸痛の場合、症状が強いから重症、軽いからといって軽症とは限らない。胸痛があれば、重大な病気が隠れていることもあるので、なるべく早く循環器科など心臓の専門医にかかることが重要だ。

 また、患者の意識がなくなったり、脈が感じられなかったり、呼吸が止まったりといった時には、人工呼吸や心臓マッサージができるかできないかが命の境目になる。誰もが心肺蘇生術の講習会を受けておく必要がある。

 では、前田さんの死因がこれらの具体的な病名ではなく、「虚血性心不全」とされたのはなぜか。東京都監察医務院の公式サイトによると、心筋梗塞と診断されるには、心臓に血液が供給されない状態が30分以上続くことが前提だが、虚血性心不全は心筋梗塞の初期が多く、比較的短時間で死亡するため、心筋梗塞との確定診断ができないなどの理由により、突然死の場合は「心筋梗塞」とはしないという。

(あなたの健康百科編集部)

更新履歴:
2011年9月2日掲載
2016年4月26日内容再確認・一部改変

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