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不整脈あると交通事故後の死亡リスク1.5倍―米調査

 2016年06月17日 06:00

 米国で交通事故によるけがなどで入院した約300万人の調査から、心房細動(不整脈の1つ)がある人では事故後、死亡するリスクが心房細動のない人に比べて1.5倍であることが明らかにされた。メイヨークリニックの循環器医、アビシェーク・デシュムク氏が6月8~11日にフランス・ニースで開かれた欧州不整脈学会の会合で報告した。

入院期間の延長や入院費の高さにも関係

 心房細動とは、不整脈のうち最も高頻度にみられるもので、心臓の「心房」と呼ばれる部分が細かく震える状態を指す。高齢になるほど心房細動にかかりやすくなることが知られ、わが国では80歳以上の高齢者の10人に1人に心房細動があると報告されている。

 今回、デシュムク氏らは、2003年から2012年にかけて米国で交通事故によるけがなどで入院した298万人(運転者、同乗者、たまたま事故を起こした自動車の近くにいてけがをした人を含む)のデータを分析した。

 このうち7万9,687人(2.6%)に心房細動があったが、同氏らが心房細動があった人となかった人で入院中の死亡リスク、入院期間、輸血が必要な状態になる確率、入院による費用を比べたところ、心房細動以外の持病や年齢、けがの重症度などによる影響を取り除いて分析しても、心房細動患者は入院中に死亡するリスクが心房細動のない患者に比べて1.5倍に上ることが示されたという。

 さらに、心房細動があった人では、なかった人に比べて入院日数が平均で2.4日長く、入院費も7,400ドル(1ドル105円換算で約77万円)の差があったという。

 心房細動があると血液の流れが滞り、「血栓」と呼ばれる血の塊ができやすくなる。血栓ができてしまうと、それが血液の流れに乗って脳まで飛んでいき、脳の血管が詰まって「脳梗塞」を起こす。そのため、心房細動があると、脳梗塞を予防するために血液をサラサラにして血栓をできにくくするための「抗凝固薬」による治療を受けることが多い。ただ、こうした「抗凝固薬」は血液をサラサラにする効果がある一方で、出血リスクも高めることから、血栓予防と出血予防のバランスを考慮しながら服用量が決められることになっている。

 デシュムク氏は、今回の調査で心房細動のある人では交通事故後の死亡リスクが高いことが示された背景には、出血リスクを伴う抗凝固薬を服用している人が多いことがあるのではないかと考察。ただ、「今回の結果を受けて心房細動患者に運転を辞めるよう勧めるのは不適切」として、「この結果は過去のデータを分析しただけのものであるため、今後、より厳密な手法で検証していく必要がある」と強調した。

(あなたの健康百科編集部)

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