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食物アレルギーを「貼って治す」?

 2016年07月08日 06:00

 近年、増え続けている子供の食物アレルギー。食物アレルギーの治療では一般的にアレルギー症状の原因と考えられる食べ物(アレルゲン)を食べないようにする「除去食」が行われることが多いが、成長期の子供にとっては除去することで栄養不足が問題になることも。そこで最近、耐性の獲得(アレルゲンである食べ物を食べても大丈夫な状態になること)を目指した「免疫療法」が注目されている。現在、一部の医療機関で行われている免疫療法は、医師の監視下でアレルゲンを少しずつ食べたり、注射したりするもの。さらに、これらに加えて今後、新たな治療選択肢として期待されているのが「経皮免疫療法」だ。これは、皮膚にアレルゲンを含んだパッチ製剤を貼って耐性の獲得を目指すというもの。6月17~19日に東京都で開催された日本アレルギー学会の会合では、経皮免疫療法の研究を行っている同愛記念病院(東京都)小児科副部長の白川清吾氏が、この治療法の特徴について解説した。

経口免疫療法よりも安全

 同院では、食物経口負荷試験でアレルギー症状が誘発される原因食品の量を調べた上で、その食品を少しずつ食べていく経口免疫療法を行っている。これに加え、2010年からは皮膚にアレルゲンの含まれるパッチ製剤を貼付する経皮免疫療法も行っている。白川氏によると、経口免疫療法ではしばしばアレルギー症状が誘発され、継続が困難な場合も少なくない。それに比べ、経皮免疫療法は全身の症状が誘発される危険性が少なく、より安全性が高いという。

 経皮免疫療法は、米国でも牛乳アレルギー患者で症状が誘発される閾値(食べても大丈夫な量)が上がったという臨床試験の成績が得られていて、現在は卵やピーナツのアレルギー患者でも有効性や安全性を検証しているところだという。

 同愛記念病院でも卵と牛乳のアレルギー患者を対象とした経皮免疫療法の臨床試験を実施したところ、やはり症状が誘発される閾値が上がったという。安全面についても、皮膚の部分的な発赤やかゆみといった症状が出た患者は多かったが、全身の症状が出た患者は1人もいなかったとしている。

 こうした成績を見ると、この治療法に大きな期待を抱いてしまうが、同氏は経皮免疫療法を受ける患者は「経口免疫療法による効果がみられない」「経口免疫療法を続けることが難しい」「感作が成立していてアレルゲンの負荷によって症状が誘発される」「健康な皮膚が存在する」などの条件を満たしている必要があると指摘。さらに、どんな患者に適しているのかなどについては引き続き検討すべきとした。その上で、経皮免疫療法は将来的に食物アレルギーの新たな治療選択肢になりうるとの期待を示した。

 なお、経皮免疫療法や経口免疫療法といった食物アレルギーの免疫療法は現在、まだ研究段階にあるため、誰もが受けられる治療ではない。食物アレルギーの患者が自己判断でアレルゲンである食べ物を食べたり、皮膚に貼付したりすると、それが少量であってもアナフィラキシーショックなどの命にかかわる状態に陥る可能性がある。極めて危険であることは覚えておきたい。

(あなたの健康百科編集部)

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