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ペットの熱中症に注意! 人間よりかかりやすい

 2016年07月13日 14:00

 沖縄と奄美地方を除いて梅雨が明けていないにもかかわらず、暑い日が続いております。これだけ暑いと、日中はなかなか出歩く気にはなりませんね。でも、子供や高齢者をはじめ、毎日のように熱中症で病院に搬送されたというニュースを見かけます。私が診察をしていて時々聞かれるのが、「動物にも熱中症があるんですか?」という質問。知っている方は当然でしょ? と思われるかもしれませんが、知らない方も意外と多いのです。熱中症は犬や猫、ウサギ、ハムスター、鳥、爬(は)虫類にもあり、人間よりもかかりやすいとされています。

パグやフレンチブルなど短頭種は要注意

 動物の熱中症は人間と同様、本質的には、脱水によって体温が上がり、それに伴って内臓への血流が悪くなることと多臓器不全のことです。犬の場合、体温が下がらず41度を超えると細胞が障害を受け始め、42~43度の状態が続くと体内のタンパク質が異変を起こして多臓器不全になります。

 犬や猫には、汗を分泌する汗腺が脚の肉球と鼻にしかないため、汗をかくことによる体温調節ができません。呼吸だけで体温を下げなければならないのでとても効率が悪く、人間よりも熱中症になりやすいのです。また、人間と比べて地面に近い場所で行動しているために輻射熱(ふくしゃねつ=地熱)の影響を受けやすく、人間が少し暑いかなと感じるくらいでも危険な状態に陥ることがあります。

 犬は人間と生活するために、さまざまな特徴を持った種類が存在します。そして、その体の特徴から熱中症を起こしやすい犬種もあります。有名なのは、パグやフレンチブルドッグ、シーズーといったマズル(鼻梁=びりょう)の短い、いわゆる「短頭種」です。

 犬のマズルは、吸い込んだ空気を通過する際に冷却する効果があると考えられています。そのため、マズルの短い短頭種は、吸い込んだ熱い空気を十分に冷やすことができません。また、喉が狭いために呼吸による体温調節がしにくく、さらに酸欠になりやすいので、ガーガーと喉の音を鳴らしながら一生懸命に呼吸するため、余計に体に熱がこもってしまうのです。

猫は犬より熱中症になりにくいが...

 猫はもともと砂漠に棲(す)んでいたため、犬よりも暑さに強く、熱中症になりにくいとされています。それでもやはり、人間のように全身で発汗できないため熱中症にかかりやすく、注意が必要です。

 ペルシャ、ヒマラヤンなどのつぶれた鼻が特徴の猫種は犬の短頭種と同じく呼吸による熱の発散が苦手ですし、メインクーン、ノルウェージャンフォレストなどの大型猫種は、体が大きい分だけ熱が蓄積しやすく熱中症になりやすいのです。

東南アジア原産の鳥でも要注意

 その他、ハムスターなどでも種類によって生息地が違うため暑さへの抵抗力が異なりますし、インコや文鳥などは東南アジアの暑い地域の出身のため暑さに強そうですが、自然界では森の中の涼しい場所を選んで暮らしており、カゴに入った密室での高温には強くありません。また、変温動物であるトカゲやカメなどの爬虫類は自分で体温を調節することができないため、飼育環境が高温になってしまうと致命的です。

 動物の種類によって熱中症のサインは異なりますが、多くの動物は涼しい場所を求めてウロウロし始めたり、体温を下げようと口を開けて早い呼吸をしたりするほか、水をよく飲むといったいつもと違う行動が見られます。

 状態が深刻になるとぐったりとして動かなくなり、触ると明らかに熱く感じ、嘔吐(おうと)や痙攣(けいれん)を起こすこともあります。

ペットが熱中症にかかったら...

 熱中症から回復できるかは、発症してからの経過時間が大きく影響します。一般的に、熱中症の症状が現れてから30~60分以内に適切な処置が施されれば、予後(その後の見通し)は良好ですが、2~3時間が経過して高体温による症状が現れていると回復は難しくなっていきます。

 そのため、おかしいなと感じたらすぐに動物病院に連絡してください。上昇した体温を下げることが第一ですが、氷水に漬けるなど急激に体を冷やすとかえって悪化することもありますので、まずは電話などで獣医師の指示を受けることをお勧めします。そして、病院に連れて行き治療を受けましょう。

最も大事な予防法は?

 変化に気付くことよりもさらに大事なのは、熱中症を予防することです。外で飼われているワンちゃんは、日中は玄関など涼しい場所に移動するか、日陰と風通しの良い場所を選べるように工夫してあげましょう。

 室内で飼っている場合も、風通しの良い場所に自ら移動できるようにしてあげられればよいのですが、お留守番などで密室になってしまう場合は特に注意が必要です。エアコンを使って室温を28~30度に保ってあげましょう。クールマットなど、体を冷やせるような器具も有効です。

 また、脱水を起こすとより低い温度でも熱中症にかかりやすいですので、水は切らさないように気を付けましょう。ただし、暑い部屋で水だけ置いていると水をがぶ飲みして吐いたり、下痢をしたりしてしまうことがあるので、注意が必要です。

 熱中症は予防できる病気です。数時間のお留守番だからと、エアコンのない密室に閉じ込めていたら帰宅後ぐったりしていた...という悲しい状態にならないよう、夏場は特に注意しましょう!

馬場 智成(ばば・ともしげ)

 2005年、麻布大学獣医学部を卒業。同大学大学院に進み、慢性腎不全の研究に従事する傍ら皮膚病理を学び、獣医皮膚科学に興味を持つ。2009年より都内の複数の動物病院勤務を経て、現在、馬場総合動物病院にて診療を行う。日本獣医皮膚科学会所属、日本獣医皮膚科学会認定医。東京水産大学在学中に屋久島に滞在し、アカウミガメ産卵の調査・研究を行う中で、動物の生息する自然環境の在り方について関心を抱いている。

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