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希少疾患「骨髄増殖性腫瘍の日」啓発デー制定

 2016年09月07日 06:00

 「自分の病気について調べてもなかなか解説や治療に関する情報がなく、毎日絶望感で眠れぬ日々が続いた」と語るのは、まれな病気の一つである骨髄増殖性腫瘍(MPN)の患者であり、骨髄増殖性腫瘍患者・家族会(MPN-JAPAN)の事務局長でもある小瀬良克也氏。8月25日に東京都で開かれた製薬企業のシャイア-・ジャパンが主催したメディアセミナーでは、この病気の啓発を図る「MPNの日」が毎年9月の第2木曜日(今年は9月8日)に制定されたことを受け、専門医と小瀬良氏が講演した。専門医からはMPNの種類や特徴的な症状、診療の現状などが解説され、小瀬良氏からは闘病生活における苦労や悩み、患者会の活動内容や医師への願いなどが語られた。

3つのタイプに分類 若い人でも注意が必要なタイプも

 MPNは下図のように血液を作る細胞、いわば"血液の種"に異常が起き、赤血球や白血球、血小板などさまざまな血液の成分が著しく増え、がんを生じてしまう病気のことで、本態性血小板血症(ET)、真性多血症(PV)、骨髄線維症(MF)の3つに分類される。

 メディアセミナーで登壇した山梨大学血液・腫瘍内科教授の桐戸敬太氏は、それら3つのうち、ETとPVについて解説した。ETとPVは比較的若い年齢でも発症するため、若い患者の生活の質(QOL)を下げる要因になっているという。また、ETやPVの患者の死因として多いのは血栓(血の塊)や白血病、他のがんだと説明した。

赤血球や血小板が多い場合は要注意

 桐戸氏は、ETとPVを診断するきっかけとなるのは、患者の、「過去の健診や検査で赤血球や血小板が多いと言われた」といった発言であることも少なくないと述べた。そのため、患者にとっては検査でこのような状態になった場合などでは注意すべきであることがうかがえる。

 また、診断は一般的に世界保健機関(WHO)が定めた診断基準を用いることが一般的だが、「現時点では、この病気の発症に関わる遺伝子の異常を調べる行為については保険が適用されておらず、ごく一部の施設でしか解析できない遺伝子もある」と、その問題点も指摘した。

 さらに、ETとPVが心筋梗塞や脳梗塞といった動脈にできる血栓が原因の病気と、いわゆるエコノミークラス症候群といった静脈にできる血栓が原因の病気の両方の発症リスクを高めてしまう点(下図)や、より重い病気であるMFや急性骨髄性白血病に移行してしまうケースが少なからず見られる点、多様な全身症状を伴い、QOLを低下させる点を問題点として、これらに対応した治療を行うとした。

 続いて順天堂大学内科学血液学講座主任教授の小松則夫氏がMFについて解説した。現在、医療機関で把握している患者数は約700人とされており、男女比はおよそ2:1で男性が多く、年齢は中央値が66歳ほどで40歳未満の発症は極めてまれであるという。MFは骨髄が線維化することで発症し、主に脾臓が腫れて大きくなる脾腫や貧血、急性白血病などの症状が見られる。また、発症直後には、検査値の異常や貧血、腹部の膨満感などが多く見られると説明した。

患者同士のサポートを広げて

 セミナーでは、MPN患者でMPN-JAPANの事務局長を務める小瀬良氏が自身の闘病体験を語った。同氏が身体に異変を覚えたのは1999年で、鼻血や歯茎からの出血があり、風邪をひきやすくなったという。そこで健診を受けたところ、血小板の数が多いことが明らかになり、近所の病院の血液内科を受診した結果、MPNの一種であるETと診断された。以降、約15年にわたり抗がん薬のハイドロキシウレアを服用しているが、目まいや吐き気、腹痛や倦怠感により会社を休んだり、1週間に数回頭痛が起こったりしているという。また、最近では貧血、胸の痛み、足や手などに赤みが差し、焼けるように痛む肢端紅痛症などの症状も現れてきたと述べた。

 小瀬良氏はこれまでメーリングリストでMPN患者やその家族と交流や情報交換をしてきたが、より広く患者・家族同士でサポートできる体制をつくり、不安な日々を過ごしている患者に安心材料を提供するとともに、全国の人々に広くMPNとその患者会を知ってもらおうとMPN-JAPANを設立したと説明した。MPN-JAPANは海外でさまざまな集会を開き、国内でも交流会の開催や病気を解説する小冊子の作成、配布などの活動を行ってきているが、「MPNの日」の制定もその一環と位置付けられる。同氏は「この日をきっかけに、MPNの認知度を高め、患者にいっそう多くの情報を届けたい」と意欲を見せ、「メーリングリストなどを介したネット上のつながりだけでなく、患者と家族が実際に交流できる場も設けたい」との意向も示した。

 同氏は自らの闘病生活を振り返りつつ、MPNの症状は個人差が大きく、解明されていない部分が多いことから、「診断時、この病気の症状や治療方針、使用する薬剤などについて説明がきちんとなされていない、あるいは医師により説明が異なる場合がある」と指摘し、「そういった説明により、患者やその家族がとても不安になってしまう。医師には時間をかけて説明を尽くし、患者の不安を取り除いてほしい」と要望した。

 さらに、「MPNは脳梗塞、脳出血、心筋梗塞に対する検査や健診後の再検査で診断されるケースが多く、就職や就労、若い女性患者ならば妊娠にも大きな影響を及ぼしうる、見過ごせない病気である。医師はもちろん、国民の皆さんにもこの病気をもっと知ってほしい」と訴えた。

(陶山慎晃)

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