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結核による死者180万人―WHO推計

 2016年10月24日 06:00

 かつて日本の「国民病」とも呼ばれていた結核。その後、医療の進歩によって患者数は減ったものの、今でも1日に50人が新たに診断され、5人が命を落としているとされ、決して「過去の病気」とはいえない。また、世界的にも結核は依然として人々の健康にとって脅威となっているのが現状だ。世界保健機関(WHO)が10月13日に発表した202カ国の最新データに基づく世界の結核に関する報告書によると、2015年の結核による死亡者数は世界で180万人に上ることが分かったという。死亡例のほとんどは結核であることが診断されないまま、あるいは診断されても適切な治療が受けられないまま亡くなっている人とみられており、WHOは結核の予防や治療での対策を強化するよう呼びかけている。

1年間に新たな患者が1,040万人発生

 報告書によると、2015年の新規罹患者数は1,040万人。このうち約60%をインド、インドネシア、中国、ナイジェリア、パキスタン、南アフリカの6カ国における患者数が占めていたという。また、11%はHIVにも感染していたことも分かった。

 一方、 同年の結核による死亡者数は180万人で、このうち40万人はHIVにも感染していた。世界の結核による死亡者数はこの15年間で22%減少したが、WHOは「依然として世界の死因の上位を占めていて、HIVやマラリアによる死亡者数を上回る」と指摘。予防や治療の取り組みを強化する必要があると強調している。

 この他、複数の治療薬が効かない多剤耐性結核の感染者数は48万人、結核に対する主要な治療薬であるリファンピシンが効かない結核の感染者数は10万人に上ることも分かった。こうした薬の効かない感染者(計59万人)の45%をインド、中国、ロシアの感染者が占めることも明らかになった。

 なお、今回、世界で最も結核患者数の多いインドでのデータの精度が向上したことで、世界の結核患者数や死亡者数はこれまで考えられていた以上に多いことが判明したとしている。

日本は先進国では数少ない「中まん延国」

 国連は持続可能な開発目標(SDGs)で2015年から2030年までに結核死亡者数を90%、罹患者数を80%削減することを目標の1つとして定めているが、今回の報告書の公表に際し、WHO事務局長のマーガレット・チャン氏は「このままでは目標達成は厳しい」とのコメントを発表している。

 日本では2015年の新たな患者数は1万8,280人、死亡者数は1,955人。いずれも減少傾向にあるが、罹患率は人口10万人当たり14.4人で、先進国の多くが「低まん延国」の水準を下回っている中、わが国は同水準に至っておらず、「中まん延国」と位置付けられている。

(あなたの健康百科編集部)

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