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だれもがガイドラインを利用できる社会へ

 2017年02月03日 06:00

 もし、あなたが重い病気になったとして、病院でどんな治療が受けられるのか不安に思ったりはしないだろうか? 病気の治療で指針となるのが「診療ガイドライン」だが、一般的な認知度は低く、患者や市民の目線になっていないのが現実だ。そこで、診療ガイドライン作成への患者・市民の参加とガイドラインそのものの一般社会への普及を促すため、1月28日に日本医師会館(東京都文京区)で「Mindsフォーラム2017 患者・市民のための診療ガイドライン」が開催された。

診療ガイドラインを無償提供するサービス「Minds」

 診療ガイドラインとは、重要度の高い医療行為について患者と医師の意思決定を支援するため、エビデンス(科学的根拠)に基づいた最新の医療情報とその評価、益(効果面)と害(有害面)のバランスなどを考慮して最適と考えられる治療法を推奨する文書のこと。患者がどんな治療を受けたいかを判断する材料としての役割や、医師や施設による治療のばらつきを減らすことで国全体の治療の質を向上させる意味合いもある。

 これまで、診療ガイドラインは学会ごとに書籍などの形で公開されてきたが、日本医療機能評価機構(東京都千代田区)では、2004年6月以降から「Minds」と呼ばれる医療情報サービスをインターネット上で無償展開している。そこでは、がんや感染症、脳、心臓、あるいは救急救命など177件の診療ガイドラインが公開され、2016年度も新たに36件が追加された。

 ただし、これらは医療従事者が作成したもので、患者・市民の意見は反映されていないものが多い。また、文面も専門的な医学用語が並び、一般の人が理解しやすいとは言えない。会の冒頭で挨拶に立った日本医療機能評価機構の上田茂専務理事は「今後、診療ガイドラインが積極的に用いられるためには、患者・市民が意見交換できる場が必要」と強調した。

患者の意見を反映させたリウマチの診療ガイドライン

 そこで、患者視点の診療ガイドラインの作成が求められているわけだが、たとえば、日本リウマチ学会では全国的な患者組織である日本リウマチ友の会(東京都千代田区)に参画を依頼し、アンケートやインタビュー、パネル会議への出席を通して医療従事者と対等の立場で患者の意見を取り入れ、2014年10月に診療ガイドラインを完成させた。

 これは極めて画期的な出来事で、登壇した東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター(東京都新宿区)の山中寿所長は「高価な薬の使用は金銭的な負担が大きい。リハビリテーションなど、薬以外でできることはないかなど、患者さんの様々な要望を検討できた」と述べた。また、日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長も「自分の体験だけでなく、もっと幅広い患者の意見を診療ガイドラインの内容に反映させるのが大事」と話す。

診療ガイドラインが社会の常識になる時代へ

 最後に行われたパネルディスカッションでは、診療ガイドライン作成に参画できる人材の育成も手掛ける大阪のNPO法人、ささえあい医療人権センターCOML(大阪府大阪市)の山口育子理事長が「診療ガイドラインは、まだまだ広まっていない。臨床医が診療ガイドラインの適切な使い方を患者さんにきちんと伝えて、一緒に使っていくことが、患者のための診療ガイドラインにより近づく早道ではないか」と今後の展望を述べた。

 医療現場で治療方法が示される際、必ずしも全てが治療の主体である患者にとってベストな治療法とは言えない。さまざまな治療法の中から患者一人ひとりにとってベストの治療法が選択されるためにも、今後、患者の視点に立った診療ガイドラインが作成され、それを元に医師と患者が治療法を選択できる時代が、一日も早く来るよう願わずにはいられない。

 もし、あなたやあなたの家族が何らかの病気を抱えているなら、一度Mindsのサイトを覗いてみてはいかがだろうか。

(萩原忠久)

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