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C型肝炎治療薬で、ある患者の乾癬が軽快

 2018年02月19日 06:00

 直接作用型抗ウイルス薬の登場により、C型肝炎ウイルスに感染している患者のほぼ100%が、薬の服用でウイルスを排除できるようになった。現在では、このタイプの薬がC型肝炎治療の中心となっている。このたび、大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学の榎本大准教授らのグループは、C型慢性肝炎の治療に直接作用型抗ウイルス薬を使用したところ、ウイルスの消失のみならず、併発している慢性皮膚疾患の乾癬(かんせん)の症状まで軽快したと報告した。詳細は、1月16日の「Annals of Internal Medicine」(オンライン版)に掲載されている。

罹患から10年以上の乾癬が改善

 C型肝炎ウイルス感染者は日本で約150万人とされており、感染から10~20年以上を経て肝硬変や肝臓がんに進展することがある。実際、日本の肝臓がんの原因の約65%をC型肝炎が占めている。またC型肝炎ウイルスは、血液や腎臓、皮膚など肝臓以外の病気を引き起こす可能性もある。

 乾癬は慢性の皮膚疾患であり、日本人の罹患率は約0.1%といわれている。主な症状は、赤い発疹とその上に鱗屑(りんせつ)と呼ばれる皮膚表面の角質細胞が剥がれ落ちた白い発疹の出現。原因は明らかにされていないが、免疫異常が関与すると考えられている。そのため治療には、塗り薬や光線療法に加え、重症の場合には免疫抑制療法が行われる場合もある。そして以前から、乾癬患者はC型肝炎ウイルスの感染率が高いことが知られている。

 C型肝炎の治療には長年、インターフェロンというウイルスの増殖を抑える薬が用いられてきた。しかし、インターフェロンは免疫を介して働くため、乾癬のような免疫異常が関与する疾患を悪化させる可能性があり、合併症のあるC型肝炎患者への使用は難しかった。

 ところが、2014年にC型肝炎ウイルスの増殖を直接阻害する「直接作用型抗ウイルス薬」という飲み薬が開発され、100%に近いC型肝炎患者が、インターフェロンを使わずにウイルスを排除できるようになった。この治療薬は副作用が少ないとされており、高齢者や他の病気を合併している患者でも治療が容易だ。

 今回、報告された患者は、10年以上前から乾癬を患っている80代男性。2015年から塗り薬と週1回の光線療法を継続していたが、改善は見られなかった。乾癬だけでなく、C型肝炎も患っていたことから、12週間の直接作用型抗ウイルス薬による治療を行った。すると速やかにウイルス量が低下し、肝機能が改善。治療終了後もウイルスが再燃することはなく、完全に排除することができた。加えて、乾癬の皮膚症状も明らかに改善し、塗り薬の必要量が激減。光線療法の中止も可能となり、患者のQOLの向上につながったという。

 乾癬患者はC型肝炎ウイルスの感染率が高いことから、乾癬の発症または悪化にC型肝炎が関与する可能性が指摘されていた。しかし、実際に直接作用型抗ウイルス薬でC型肝炎ウイルスを排除した結果、乾癬の症状が軽快したとの報告は世界初だという。

 研究グループは、「今後は多くの症例で効果を検証していきたい」とコメント。C型肝炎と、乾癬などの免疫異常が関与する疾患との関係性を解明していくために取り組むべき課題として、以下を挙げた。
 1)日本の乾癬患者におけるC型肝炎ウイルス感染率を明らかにする
 2) 乾癬を合併したC型肝炎患者に対して、直接作用型抗ウイルス薬を用いてウイルスを排除することで、乾癬が軽快する確率を明らかにする
 3) 直接作用型抗ウイルス薬によるC型肝炎治療の前後で、乾癬の発症に関与すると考えられるTNF-α, IFN-γなどの免疫マーカーがどのように変化するかを明らかにする

(あなたの健康百科編集部)

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