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睡眠薬で「時差ぼけ」解消?

 2018年06月29日 06:00

 海外旅行者を悩ませる「時差ぼけ」。医学的には「Jet Lag Disorder(JLD)」という。日付変更線を超えて移動することにより、体内時計が一時的に乱れる「概日リズム睡眠障害」に分類されている。今のところJLDの治療薬はないが、睡眠薬の一種であるメラトニン受容体作動薬に、JLDの改善効果が認められたという。6月2〜6日に開催された第32回米国睡眠学会(SLEEP 2018、ボルティモア)で、その結果が発表された。

人工的な時差ぼけ状態からの回復を比較

 体内時計の調節には、睡眠と覚醒のリズムを整える働きを持つメラトニンというホルモンが関わっている。このホルモンを受け取って脳に伝えるのがメラトニン受容体であり、メラトニン受容体作動薬は睡眠薬の一種として広く使われている。

 今回、米国のVanda Pharmaceuticals社の研究グループは、メラトニン受容体作動薬tasimelteon(日本未承認)のJLDに対する有効性を検証する臨床試験を実施した。健康な人318人を対象に、最初の4週間は就寝時刻を22時、起床時刻を翌朝6時に設定し、睡眠日誌を記録するなどした。その後、tasimelteonを服用するグループ(159人)と、偽薬(プラセボ)を服用するグループ(159人)に無作為に分け、各医療施設に1泊させた。人工的に時差ぼけ状態を作るため、就寝時刻を14時、起床時刻を22時とし、就寝30分前(13時30分)にtasimelteonまたはプラセボを服用した。

 睡眠中の脳波や眼球の動き、呼吸状態などを測定するポリソムノグラフィ(PSG)を用いて、8時間中の最初の320分における睡眠時間(TST2/3)、総睡眠時間(TST)、就床から入眠までの時間を示す睡眠潜時(LPS)、中途覚醒(WASO)のほか、翌日の覚醒度(Next Day Alertness)を両グループで比較した。

睡眠薬の服用でプラセボより85分長い総睡眠時間

  その結果、TST2/3はプラセボグループが156.1分であったのに対し、tasimelteonグループは216.4分と約60分長く、同様にTSTもtasimelteonグループで約85分長く(プラセボグループ230.3分 vs. tasimelteonグループ315.8分)、睡眠時間の改善が示された。さらに、LPS(プラセボグループ36.8分 vs. tasimelteonグループ21.8分)およびWASO(同219.1分 vs. 144.6分)は、いずれもtasimelteonグループで短く、寝付くまでに要する時間や中途覚醒時間が短縮していたことが確認された。さらに、翌日の覚醒度についても、プラセボグループに比べ、tasimelteonグループで良好であることが認められた。

実際の飛行機移動でもJLD改善効果示す

 この結果を受けて、研究グループは、米国および英国の3施設で健康な人25人を対象に、航空機による実際の移動でJLDを発生させ、tasimelteonを3夜連続服用して有効性を検討する臨床試験を行った。

 その結果、投薬をしない観察期間と比べたTST2/3は、3夜目(プラセボグループ41.4分 vs. tasimelteonグループ76.2分)および3夜全て(同40.9分 vs. 131.4分)において、プラセボグループよりtasimelteonグループで明らかに長かった。今後、さらなる研究が進めば、そう遠くない将来、時差ぼけに悩まされず、旅行や出張を楽しめる時代が来るかもしれない。

(あなたの健康百科編集部)

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