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どうすればよい?不整脈を原因とする脳卒中の予防

 2018年11月09日 06:00

 脈が通常より速くなったり遅くなったりするなど、心臓のリズムが不規則になる不整脈。不整脈そのものは、良性であるものがほとんどだが、やっかいな合併症を伴うものも存在する。10月18日に開かれた日本循環器学会主催のプレスセミナーでは、東邦大学大学院医学研究科循環器内科学教授の池田隆徳氏が、不整脈とその1つである心房細動について解説し、脈拍の測定や健診の重要性を指摘した。

まず脈拍の測定や健診で不整脈の有無を調べよう

 通常の心臓は規則正しく動いており、安静時の心拍(脈拍)が1分間50~100回であれば正常とされる。この範囲を外れると不整脈の可能性が考えられる。脈拍が1分間に40回未満であれば徐脈性不整脈、脈拍が1分間に110回超であれば頻脈性不整脈と判断でき、医療機関への受診が勧められる。

 一般人で不整脈がある割合は5%といわれるが、75歳以上では約30%に上昇し、有病率は比較的高い。不整脈の症状としては動悸や脈の違和感が多いが、1/3程度は無症状といわれている。池田氏は、不整脈を検出する方法として「脈拍は、手首や首の動脈に触れることで簡単に計測でき、不整脈があるかないかわかる。気になる場合は循環器内科を受診すべきだが、まず脈拍を測定し、定期健診の受診も心がけてほしい」と述べた。

 また、不整脈の原因としては、表1のようなものを挙げ、「日常生活に原因がある場合はストレスの軽減、酒やタバコ、暴飲飲食、過度の運動などを控えることにより、約30%の患者で不整脈がなくなる」と、生活習慣改善の重要性を説いた。

表1 不整脈の起こる原因

・心臓に病気を持っている場合(心不全、心筋梗塞、心臓弁膜症など)
・生活習慣病(高血圧、糖尿病など)を持っている場合
・肺に病気を持っている場合
・甲状腺に病気を持っている場合
・自律神経のバランスが崩れている場合
・たばこや酒の常習者
・高齢者

心房細動患者でも脳卒中の危険が高いのは?

 不整脈そのものは、一部を除くとほとんどが命にかかわる病気ではない。しかし、やっかいなのは不整脈に伴う合併症で、脳卒中のように死につながるものがある。合併症が恐ろしい代表的な不整脈が心房細動で、高齢者に多く、それ自体は命にかかわることはない。しかし、心房細動により血液がよどむことで塞栓ができ、脳卒中になることがあり、このタイプの脳卒中になった患者の1年後の生存率は50%といわれる。元内閣総理大臣の故小渕恵三氏、元プロ野球巨人軍監督の長島茂雄氏、元サッカー日本代表監督のイビチャ・オシム氏が心房細動の合併症として脳卒中を発症したことは有名だ。3氏とも、死亡または重篤な後遺症が見られ、たとえ命が助かっても後の人生に大きな影響を及ぼすことが分かる。

 では、どのような心房細動患者が脳卒中を発症しやすいのだろうか。池田氏はそのリスクを判断する目安として、CHADS2スコア(表2)を挙げた。CHADS2スコアとは心不全、高血圧、年齢75歳以上、糖尿病(各1点)、脳卒中または一過性虚血の発症経験があること(2点)の英語表記の頭文字を取ったもので、1点以上であれば脳卒中に気をつける必要がある。

表2 心房細動で脳卒中を起こしやすい患者

塞栓リスク:CHADS2スコア

Congestive heart failure 心不全 1点
Hypertension 高血圧 1点
Age≧75y 年齢75歳以上 1点
Diabetes mellitus 糖尿病 1点
Stroke/TIA 脳卒中/一過性虚血の既往 2点

2点以上:危険あり、1点:危険の可能性あり、0点:危険なし

(表1、表2共に池田隆徳氏提供)

 CHADS2スコアが1点以上の場合、具体的な治療法としては、血液を固まりにくくする抗凝固薬で脳卒中を予防する方法、カテーテルにより心房細動を起こしている心筋の一部を特殊な器具で焼いてしまうことで根治する方法が挙げられ、ともに有用な治療法として知られている。しかし、いずれにしても心房細動を見つけないことには治療できない。同氏は「いったん脳卒中を発症し障害が残れば、助かっても莫大な医療費がかかり、介護も必要となる。そうなれば、自分だけでなく家族にも大きな負担がのしかかる」とし、「自分で脈拍を測定したり、健診などで日頃から注意をしてほしい」と締めくくった。

 

(あなたの健康百科編集部)

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