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がん治療と仕事、どう両立する?

 2018年12月25日 06:00

 厚生労働省が推進する「がん対策推進企業アクション」という取り組みをご存じだろうか。日本はがん死亡者数が年々増加を続けているが、がん検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最低レベルにとどまっている。そこで、成人に対してがん検診の重要性を啓発し、企業でのがん対策をサポートするべく立ち上げられたのが同アクションだ。11月13日、東京大学病院で「今から始めよう!オトナのがん教育」と題したメディアセミナーが開かれ、東京大学病院放射線科准教授の中川恵一氏による講演の他、がんサバイバー9人が登壇し、がん治療と仕事の両立などの経験を述べた。

原因に「ヘルスリテラシー」の低さ

 日本人が一生のうちにがんを罹患するリスクは、男性で62%、女性で46%と高水準にあるにもかかわらず、がん検診受診率は向上していない。その理由として「国民個々の『ヘルスリテラシー』の低さが挙げられる」と中川氏。「小中高校での保健体育の授業が『体育』に偏り、『保健』が十分でないためではないか」と指摘し、東京都東村山市の中学校で、10年余り保健の授業が未履修となっていた事例などを取り上げた。

 こうした状況の下、同氏らによる積極的な働きかけなどを受けて、学習指導要領にがん教育が明記され、昨年(2017年)4月には小中高校で、がんの症状や治療法、早期発見と検診の重要性に関する授業が開始された。

 「子供のときからがん教育を受け、正しい知識が身に付けば、大人になってがん検診を受けてくれるだろう」と同氏。「今後の課題は、職場での大人に対するがん教育。出張講座も実施しているので、がん対策推進企業アクションをぜひ活用してほしい」と呼びかけた。

「家族より会社に伝える方が大変」

 日本では2016年12月にがん対策基本法が改正され、第8条に「事業主は、がん患者の雇用の継続等に配慮するよう努める」との文言が記載された。

 本庶佑氏のノーベル賞受賞が記憶に新しい免疫チェックポイント阻害薬など、昨今の医療の目覚ましい進歩により、がんはいまや治癒が可能な病気となりつつある。となれば、企業に求められるのは、がん患者が仕事と治療を両立できる環境作りであろう。

 この日、発言したがんサバイバーからは、がん患者が治療と仕事を両立するため、がん教育や検診について正しい認識を持つことの重要性を、企業ひいては日本社会に正しく理解してほしいとの意見が聞かれた。

 「大方の人は、『自分はがんにならない』という思い込みがあると思います。そのため、がんが突然見つかると、びっくりし慌てて仕事を辞めてしまうケースが多いのではないでしょうか。私はたまたま家族にがん患者がいて、がんに関する知識も多少あったので、結果として治療と仕事を両立することができました」(神奈川県在住、女性)

 「子供を出産して、職場復帰した翌月に乳がんが見つかりました。抗がん薬での治療中は、休職ではなく、休暇を取得しながら仕事を続けましたが、会社側にあまりがんの知識がなく、家族よりも会社に伝える方が大変でした」(東京都在住、女性)

中川恵一氏(左)と参加したサバイバー

 がん対策推進企業アクションでは、推進パートナーとして登録した企業・団体に対し、ポスターやニュースレター、小冊子などの啓発ツールの無料提供に加え、勉強会の実施、出張講座のコーディネートを行っている。推進パートナーへの登録は、下記関連リンクで行うことができる。

◆がん対策推進企業アクション・公式ホームページ
http://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/

(あなたの健康百科編集部)

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