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「処方別がん薬物療法説明書」を公開

 2019年02月26日 06:00

 近年、がん治療の進歩は目覚しく、多くの患者で生存期間が延長している。昨年(2018年)、本庶佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞したことで注目を集めた免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの新規がん治療薬について、新聞やニュースで耳にしたことがある人も多いだろう。しかし、これらがん治療薬の投与法や使用目的、治療に際しての注意事項、効果と副作用などは分かりにくく、多くのがん患者が薬物療法に対する悩みを抱えていた。今回、静岡県立静岡がんセンターは、そうした患者の悩みを解決する手がかりとなる「処方別がん薬物療法説明書」を作成、公式サイトで公開した。

患者や家族が知りたい情報を的確に提供

 厚生労働省の最新がん統計によると、2016年に新たにがんと診断された人は99万5,132人、2017年にがんで死亡した人は37万3,334人に上る。治療の進歩により、早期であれば完治が目指せるようになり、生存期間は延長しているものの、いまだ多くの人ががんに苦しめられている。

 また、がん薬物療法の多くは複数の薬を組み合わせて行う「併用療法」と呼ばれるもので、がんの種類、治療目的や期待される効果、患者の状態などによって、さまざまな組み合わせ(レジメン)がある。当然、薬の副作用も多様であり、対処するには正しい知識・情報が必要となる。しかし、そうした情報の多くは医療関係者向けに書かれていたり、医療者の視点で作成されていたりしたため、がん患者や家族にとっては分かりにくく、悩みの1つになっていた。

 そこで静岡がんセンターは、がん薬物療法について患者や家族に正しい情報を的確に提供することを目的に、①治療法(目的、効果、スケジュール)②注意事項(治療前・後)③副作用の対処と工夫(病院に連絡する目安、予防を含めた具体的な対処法)などをまとめた「処方別がん薬物療法説明書」を作成した()。

図. 「処方別がん薬物療法説明書」の一例


©静岡県立静岡がんセンター

患者・医療者の双方から高い評価を受ける

 これまで同センターでは、がん薬物療法を受ける患者・家族に対し、医師・看護師・薬剤師などが説明を行っていた。しかし、説明者による内容のばらつき、重複が見られ、また治療前にこうした情報を一気に説明されても、患者側は正確に理解するのが難しいという問題があった。

 そのため、この説明書は医師・看護師・薬剤師が協力して作成、試作版を実際の患者説明時に使用し、患者視点から得られた評価・意見を踏まえて改訂を重ね、2015年に32療法43冊で院内運用を開始した。今回公開されたのは、さらに改訂・追加を加えた70療法91冊。治療法や副作用への対処が一冊にまとめられており、患者がこれから受けるがん薬物療法の全貌についてしっかりと把握し、理解を深める手助けになると期待している。 

 説明書の編集担当者の1人で同センター研究所看護技術開発研究部長の北村有子氏によると、使用した患者からは「具体的に書いてあり、安心感につながった」「食欲不振の内容が参考になった」、医療者からは「患者に伝えるべき項目に漏れがなくなった」「説明書に十分目を通している患者は説明の理解度が高いと感じた」といった声が寄せられているという。

閲覧は下記から
●静岡県立静岡がんセンター
https://www.scchr.jp/information-prescription.html
「処方別がん薬物療法説明書【患者さん向け】」

(あなたの健康百科編集部)

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