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災害時の血栓対策―熊本地震の教訓を生かそう

 2019年04月09日 06:00

 2016年4月14日の熊本地震から間もなく3年を迎える。震災などの被災者には深部静脈血栓症(DVT)が起こりやすいことが知られているが、熊本地震後1カ月におけるDVTの詳細な調査結果が4月6日に発表された(Circulation Journal 4月6日オンライン版)。DVTは下肢の静脈に血栓ができる病態で、無症状なことも多いが、血栓が肺に移行すると肺塞栓症という致死的な病気を起こすので要注意だ(いわゆるエコノミークラス症候群)。熊本地震の教訓を、誰の身にも起こりうる災害時の血栓対策に生かしたい。

避難生活者の1割にDVTが発生

 災害と血栓に深い関連性があることは、阪神淡路大震災やそれ以降に発生した大規模災害後の医学研究で明らかにされ、災害後の水分や食事を十分に摂取できない環境や、精神的ストレスなどが血栓の原因になると指摘されている。特にリスクが高いのは、避難所や車中などで避難生活を余儀なくされる人たちだ。長時間足を動かさないため血行不良となり、血液が固まりやすいと考えられている。

 今回の調査は、医療機関・学会・行政によるKEEP Projectが主導し、熊本地震発生後に県内80の避難所において、避難生活者を対象に各種医学調査や検査を行った。DVTのスクリーニングは超音波検査で行い、DVTが認められた人には引き続き検査を行ったり、医療機関の受診を勧めたりした。

 震災後4週間以内に超音波検査を行った1,673人中、DVTは178人(10.6%)に認められた。

「70歳以上」「睡眠薬服用」「下肢の浮腫」「下肢静脈瘤」は要注意

 DVTが発生した人では発生しなかった人に比べ、高齢で、睡眠薬服用者が多く、高血圧、脂質異常症、下肢の浮腫、下肢静脈瘤を合併する人が多かった。

 さらに解析すると、70歳以上、睡眠薬服用、下肢に浮腫あり、下肢静脈瘤ありの4つがDVTの危険因子だと結論された。DVTの発生率はこれら危険因子が全くないと5.4%だが、1つあると10.5%、2つあると13.5%、3つあると24.1%と徐々に上昇し、4つ全てがあると71.4%に急増すると計算された。

 被災地におけるDVT予防対策については、既に多くの公的機関が提言を発表している。例えば、日本血栓止血学会は、避難所の外に出て散歩や体操など足の運動を行うこと、水分摂取をこまめに行うことなどを奨めており、「特に注意すべき人」として、高齢者、肥満者、妊娠中や出産後間もない人、外傷や骨折の治療中の人、心臓病・がん・脳卒中のある人を挙げている。

 熊本地震の教訓は、「特に注意すべき人」に前記した4つを加えることだろう。該当する人は、日本血栓止血学会が奨めている「歩行時の息切れ、胸の痛み、一時的な意識消失、あるいは片側の脚のむくみや痛みなどが出現したら、早めに医療従事者に相談する」ことを肝に銘じておいた方がよさそうだ。

(あなたの健康百科編集部)

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