新米ママパパの寝不足は6年間続く
2019年04月18日 06:00
子どもの誕生は、母親や父親に何物にも代え難い喜び、幸せを与えてくれる。その一方で、多くの新米ママ、新米パパは夜間の断続的な授乳、夜泣きや急な発熱・体調不良、さらには育児に関する不安などから睡眠不足となる。ミルクを与えても、おむつを替えても泣き止まないわが子をだっこしながら途方にくれたり、ベビーベッドに寝かせた途端に火が付いたように泣かれ、一緒に泣きたくなった人もいるだろう。「明けない夜はない」と言われるが、ママやパパの寝不足が解消されるには、どれくらいの時間が必要なのだろうか−。子どもの誕生が両親の睡眠に与える影響を調べた米英独3カ国の研究者による検討が、米国の医学誌Sleep(2019年1月14日オンライン版)に掲載された。
ドイツの父母4,659人を対象に睡眠時間と満足度を調査
この研究は、妊娠前・妊娠中・出産後における、母親と父親の睡眠満足度と睡眠時間、睡眠に影響を与える要因(好影響:保護因子、悪影響:危険因子)の調査を目的として、英・ワーウィック大学、米・ウエストバージニア大学、ドイツ経済研究所が協力して行ったもの。
対象は、ドイツの世帯消費や健康に関する大規模調査SOEP(German Socio-Economic Panel Study)の参加者のうち、2008〜15年に第一子、第二子、第三子の誕生を報告し、睡眠の満足度と睡眠時間について年に1回の訪問アンケートに回答したドイツ在住の4,659人(女性2,541人、男性2,118人)。
参加者の負担を軽くするため、睡眠の満足度に関する質問は「あなたは現在の睡眠にどの程度満足していますか?(「0:全く満足していない」〜「10:完全に満足している」の11段階で評価)」という1項目に限定した。睡眠時間については、「就業している日(平日)の平均睡眠時間」と「休日(週末)の平均睡眠時間」を尋ね、「(平日の睡眠時間×5+休日の睡眠時間×2)/7」で算出した。親の睡眠に影響を与える要因に関しては、母乳哺育、親子の年齢差、世帯収入、持ち家/賃貸、両親/ひとり親を検討した。
母親の睡眠時間は初産3カ月後に60分以上減少
検討の結果、妊娠前に比べ第一子出産(初産)後の3カ月間で、母親の睡眠満足度は−1.81ポイント、睡眠時間は−62分と激減していた。父親もそれぞれ−0.37ポイント、−13分と減少していたものの、母親ほど大きな変化ではなかった。
さらに、第一子誕生後4〜6年時点の検討から、母親の睡眠満足度と睡眠時間は依然として妊娠前の状態まで回復していないことが分かった(それぞれ妊娠前と比べて−0.95ポイント、−22分)。同様に、父親の満足度(同−0.64ポイント)、睡眠時間(同−14分)も回復するどころか、やや悪化していた。
また、子どもの誕生が睡眠満足度に与える影響は、母親・父親とも第一子に比べて第二子以降で少なかったが、対照的に睡眠時間に与える影響は、第一子、第二子、第三子に関係なく大きかった。
これらの結果について、研究者は「産後3カ月という期間は、乳児の夜泣きのピークと一致している。頻繁な夜間の授乳やおむつ交換といった介助に加え、赤ちゃんの夜泣き、むずがりなどが両親の睡眠障害の主な原因と考えられる。さらに、出産後の体の痛みや子育ての責任へのプレッシャーも影響しているのではないか。影響が6年間と長期に及ぶのは、子どもが大きくなっても親としての義務、責任、緊張、心配などはついて回るからではないか」と考察している。
母乳哺育、世帯収入、ひとり親などは、ほぼ無関係
次に、両親の睡眠に影響を与える要因について検討した。母乳哺育は母親の満足度(−0.72ポイント)、睡眠時間(−14分)にわずかな悪影響を与えたが、父親では関係がなかった。持ち家所有は、母親のやや良好な満足度(+0.27ポイント)、わずかに長い睡眠時間(8分)と関連していた。親子の年齢差、世帯収入、両親/ひとり親は、いずれも無関係だった。
研究グループは「われわれは、大規模な調査と6年以上の長期観察により、母親の睡眠満足度は妊娠期間を通じて減少し、初産後最初の3カ月で最低に達すること、睡眠時間は初産後3カ月で約1時間の大きな減少を示し、6年後でさえ妊娠前のレベルには回復しないことを初めて明らかにした」と述べている。さらに、「第二子、第三子出産による母親の睡眠満足度への影響は、初産後ほどではなかった。対照的に睡眠時間は何人目の出産かに関係なく、同様に減少した。これらは、女性の一般的なライフイベントである妊娠・出産は、広範な睡眠障害を引き起こすことを示している。また、父親の満足度と睡眠時間の変化は母親の3分の1以下であった。これはドイツを含む大半の先進国においても、いまだに母親の方が家事や育児の負担が大きいことを示唆している。ただし、父親も第一子誕生後6年以内に満足度・睡眠時間が妊娠前のレベルに回復することはなかった」とまとめている。
赤ちゃんが小さいうちに子ども部屋で寝かせる習慣があり、父親の育児休暇取得率は高く、子育て政策も手厚い欧米と、親子で川の字になって眠る習慣があり、まだまだイクメン・家事メンは少なく、働く母親への支援も不足しがちな日本を単純に比較することはできないが、寝不足は新米ママパパの世界共通の悩みであるようだ。
(あなたの健康百科編集部)