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和の発酵食品で早産リスクが減少

 2019年05月17日 06:00

 日本の早産(妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産)率は約5%と推定され、他の先進国に比べて低いものの、早産には死産や低体重児出産、子どもの後遺症などのリスクが伴うため対策が求められる。欧米の研究から、代表的な発酵食品であるヨーグルトを食べることで早産のリスクが減少する可能性が報告されているが、味噌や納豆といった日本食特有の発酵食品と早産の関係については検討されていなかった。富山大学病院産科婦人科の伊藤実香氏、同科教授(現・同大学学長)の齋藤滋氏らの研究グループは、大規模な全国調査のデータを用いて、妊娠前の発酵食品の摂取頻度と早産の関連を世界で初めて検討。その結果を、医学誌Environmental Health and Preventive Medicine2019; 24: 25)に発表した。

早産には感染と免疫が関連

 一般的に、早産の再発リスクは早産した回数が多いほど、また前回の出産が妊娠早期(妊娠34週未満)であるほど高まる。前回が妊娠34週以下の早期早産であった場合、次の妊娠で早産となる確率は16%という報告もある。

 早期早産の原因の1つに細菌感染があり、早期早産で生まれた幼児の卵膜や胎盤には感染の影響が見られることが多く、細菌性腟炎の女性は早産リスクが高いという。また、膠原病やリウマチなどで免疫抑制治療を受けている女性や糖尿病の女性は感染症を発症しやすく、早産リスクが高いとされる。このように、早産には感染とそれに対する免疫が強く関係している。

 一方、ヨーグルトや納豆などの発酵食品に含まれる乳酸菌、納豆菌などはプロバイオティクスと呼ばれ、腸内環境を整えて健康増進によい影響をもたらすこと、免疫力を高めて細菌やウイルスに対する予防効果を示すものがあることが知られている。

 そこで研究グループは、環境省の主導で2010年に開始された大規模かつ長期の研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いて、プロバイオティクスを含む発酵食品の摂取と早産リスクとの関連を検討した。

約7万8,000人の女性で検証

 対象となったのは、エコチル調査の参加者から早産の経験者、妊娠高血圧症候群(血流が悪化して、胎児の発育不全を引き起こす)や前置胎盤(胎盤が子宮の出口を塞ぐため、ほぼ100%帝王切開で分娩する)などの早産のリスクが高い女性を除いた7万7,667人。食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)を用いて妊娠前の発酵食品①味噌汁②ヨーグルト③納豆−の摂取頻度を評価し、早産との関連を検証した。

 その結果、妊娠前に味噌汁を食べる頻度が「週1日以下」と答えた女性を100とした場合の早期早産のリスクは、「週1〜2日」で58、「週3〜4日」で69、「週5日以上」で62と、いずれも統計学的に有意に早期早産になりにくい(リスクが低下している)ことが分かった。

 同様に、①ヨーグルトを食べる頻度が「ほとんどない」女性を100とすると、「週1〜4回」で83、「週5回以上」で62と「週5回以上」で有意にリスクが低く、②納豆を食べる頻度が「ほとんどない」女性を100とすると、「週1〜2回」で89、「週3回以上」で60と「週3回以上」で有意にリスクが低下していた。一方、後期早産(妊娠34〜36週)のリスクについては、3食品とも関連していなかった。

 これらの結果について、研究グループは「今回、妊娠前に味噌汁やヨーグルト、納豆を食べるように心がけている女性では、早期早産のリスクが低下することを世界で初めて明らかにした。特に日本食の定番である味噌汁は、週に1日という頻度でもリスクが低くなる傾向が認められた」とまとめた上で、「ただし、たくさん食べれば食べるほどリスクが下がるわけではなかった。また、妊娠後にたくさん食べても早産を予防する効果はないので、これらの点に注意が必要だ」と述べている。

 味噌の過剰摂取は高血圧との関連も指摘されているので、くれぐれも食べ過ぎにはご注意を

(あなたの健康百科編集部)

【関連リンク】

環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」

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