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食育のカギは親の生活習慣にあり

 2019年06月27日 06:00

 子供の健康増進には、栄養教育(食育)による子供の食習慣の改善が重要となる。例えば、小児肥満には睡眠不足、テレビやインターネットなどのメディア視聴時間の長さ、朝食の欠食、孤食などが影響するとされている。2005年に食育基本法が制定され、食育に関する取組みが進められている一方、親の生活習慣と子供の食習慣の関係については見過ごされがちである。富山大学と富山県教育委員会が連携事業として実施した「文部科学省スーパー食育スクール事業」の追加調査の結果、子供の健康の基本となる食事の質は親の生活習慣と密接に関わっていることが明らかになった。研究成果の詳細は、日本疫学会の学会誌Journal of Epidemiology6月1日オンライン版)に掲載されている。

親の生活習慣の乱れが子供の食習慣の悪化に関連

 今回の調査では、富山県高岡市内の5つの小学校に通う全児童2,129人を対象に、家庭の社会経済環境、親子の生活習慣などに関するアンケートを実施。1,986件の回答が得られ、有効回答数は1,632件であった。アンケートでは家庭環境および食習慣に関する6つの質問(食育への関心、栄養バランス、朝食の欠食、朝食の孤食、野菜摂取頻度、間食の頻度)について、保護者もしくは児童に回答してもらった。

 その結果、「生活にゆとりがない」と回答した家庭では、「生活にゆとりがある」と回答した家庭と比べて「食育に関心がない」「食事の栄養バランスを考慮しない」「子供が野菜を食べない」と回答する割合が高かった。

 また、父親、母親それぞれに7つの生活習慣〔①適切な睡眠時間(7~8時間)をとる②喫煙をしない③適正体重を維持する④過度の飲酒をしない⑤定期的な運動を行う⑥朝食を毎朝食べる⑦間食をしない〕について尋ね、当てはまる項目の数により生活習慣を「よい(6~7個)」、「ふつう(4~5個)」、「わるい(0~3個)」に分けて子供の食習慣との関係を調べた。すると、生活習慣が良好な母親に比べ、生活習慣が乱れている母親では「食育に関心がない」「食事の栄養バランスを考慮しない」「子供が朝食を1人で食べる」と回答する割合が高かった。

 同様の傾向は父親の回答結果でも認められたが、母親の生活習慣の乱れの方がより強く子供の食習慣に影響していた。この理由について、研究グループは「一般的に、父親よりも母親の方が子供と過ごす時間が長く、食事をつくる頻度も高いためではないか」と考察し、「性別に関わらず、食事をつくる親の生活習慣が子供の食習慣に影響を与えている可能性がある」と述べている。なお、生活習慣が乱れている両親では「生活にゆとりがない」と回答する割合が高かった。

子供のメディア視聴時間や睡眠時間も食習慣に影響

 一方、子供自身の生活習慣と食習慣の関係については、子供のメディア視聴時間が長いほど「朝食を食べない」「野菜を食べない」「1日2回以上間食する」と回答する割合が高く、睡眠時間が短いほど「朝食を食べない」と回答する割合が高かった。研究グループは「メディア視聴時間が長いほど間食に手が伸びやすくなり、メディア視聴時間が長く睡眠時間が短い子供は起床時刻が遅くなり、朝食を食べないのかもしれない」との見方を示している。その他、身体活動性が低い子供は「野菜を食べない」と回答する割合が高く、男児に比べ女児で「朝食を食べない」との回答が多かった。

 今回の調査結果から、子供が望ましい食習慣を身に付けるためには、①社会環境②家庭環境③子供自身の生活習慣─という3つの要素が求められることが示された()。社会環境は個人の努力による改善は難しいが、親や子供の生活習慣については見直しが可能である。研究グループは「子供が望ましい生活習慣を身に付けるためには、子供の健康教育だけでなく親の健康教育も必要」とした上で、「地域社会や学校の協力の下、子供の健康習慣の構築を推進することが求められる」と結論している。

図. 子供の生活習慣づくりにおける社会決定要因と生活習慣の連鎖

(富山大学プレスリリースより)

(あなたの健康百科編集部)

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