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がんと糖尿病を合併すると認知症のリスクが上昇

 2019年08月27日 06:00

 糖尿病の人では、認知症とがんの両方の発症リスクが高まることが知られている。一方で、がんが認知症発症の危険因子かどうかについては明らかになっていない。さらにがんと糖尿病を合併することが、正常と認知症の中間といわれる軽度認知障害(MCI)や認知症のリスクにどのように影響しているかを調べた報告もない。今回、日本人を対象にした研究結果から、中年期にがんと糖尿病を合併していると、MCIや認知症の発症リスクが高くなる可能性が示されたことを国立がん研究センター・社会と健康研究センターの貞廣良一氏らの研究グループが発表した(Psychiatry Clin Neurosci 2019年7月21日オンライン版)。

インスリン抵抗性が関与か

 今回研究グループは、長野県南佐久郡の8町村の住民で1990年時に行ったアンケートに回答した40~59歳(当時)の約1万2,000人のうち、2014~15年に行った「こころの検診」にも参加した1,244人(脳卒中の罹患者は除外)のデータを用いて、中年期のがんおよび糖尿病への罹患とMCI・認知症との関連を検討した。

 こころの検診では、記憶やその他の認知機能に関する4つの検査と医師の判定により、MCIと認知症の診断を行った。その結果、全体では421人(33.8%)がMCI、60人(4.8%)が認知症と診断された。

 MCIおよび認知症と診断された人を、がんと糖尿病の罹患の有無で4グループに分け、比較した。すると、がんと糖尿病のどちらにも罹患していないグループに対し、がんと糖尿病の両方に罹患しているグループでは、MCIのリスクは3.4倍超、認知症のリスクは約16倍と統計学的に有意に高まることが示された。

 今回の研究結果について、研究グループは「がんと糖尿病を合併したグループでは、他のグループよりもインスリン抵抗性(膵臓から分泌され血糖値を下げるホルモンのインスリンが十分に働いていない状態)が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性がある」と考察している。これは、糖尿病はインスリン抵抗性を高めることでがん発症リスクを高めるとされるのに加え、がんの罹患後にはインスリン抵抗性が高くなることやインスリン抵抗性の高さは認知症の発症に関与することが報告されているためだという。

 なお研究の限界として、①研究参加者が少ない②こころの検診は地域住民の一部しか参加していない③研究開始時に既にMCIと認知症を発症していた人が除外できていない―ことなどを挙ている。そのため、今回示された結果は一般の人たちには当てはめられない可能性がある。今後さらに研究が進むことが期待される。

(あなたの健康百科編集部)

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