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薬の副作用 薬疹の早期診断法を開発

 2020年02月26日 06:00

 医薬品の重篤な副作用の1つで、全身の皮膚や眼が重症やけどのような状態になるスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)。抗菌薬、解熱消炎鎮痛薬、市販のかぜ薬など医薬品の服用後にまれに現れることがある。新潟大学の研究グループは、SJSやTENの早期診断や重症度の判定を可能にする診断法を開発したと発表した。

全身に炎症が生じ、死に至ることも

 SJSおよびTENは、全身の皮膚や粘膜がただれて、失明や死に至ることもある重篤な薬疹である。原因となる医薬品は、痛風治療薬、抗けいれん薬、抗菌薬、非ステロイド抗炎症薬、市販のかぜ薬などさまざまである。TENは致死率が20%と高く、SJSは重度の視力障害が残る場合もある。

 できるだけ発症早期に診断し治療を開始する必要があるが、症状が軽度なケースでは発症早期は軽症の薬疹と見分けがつきにくい例もあるという。そのため、発症早期に正確な診断ができる検査法が求められていた。

RIP3濃度に相関して、障害される臓器が増加

 不要な細胞を除去する「プログラム細胞死」としては「アポトーシス」が有名だが、研究グループは、SJSやTEN患者ではアポトーシスと異なる「ネクロプトーシス」という細胞死が起きていることを発見。ネクロプトーシスが生じた細胞は、「RIP3」という分子を細胞内から細胞外に放出していることに着目し、重症薬疹の診断や重症度の判定に応用できるかどうかを検討した。

 まず、皮膚の培養細胞を用いて、ネクロプトーシスの刺激を加えた皮膚の細胞で、RIP3を細胞外に放出されるかを検討した。その結果、ネクロプトーシスを生じさせると、RIP3を細胞外に放出することが確認された。

 次に、SJSまたはTENの患者22人、通常型薬疹(軽症または重症多型紅斑型、播種状紅斑兵疹型)患者30人、別の重症薬疹である薬剤過敏症症候群患者4人、健常者5人の血液中のRIP3濃度を測定して、比較した。

 解析の結果、SJSやTENの患者では、その他の薬疹を発症した患者や健常者と比べて、明らかにRIP3値が高かった。また、RIP3値が高い人ほど、眼、口の中、陰部などの粘膜症状、肝臓や腎臓など障害される臓器が増えていた。

 これらのことから、研究グループは「RIP3は重症薬疹の診断や重症度を判定する有用な検査法になりうる」と結論している。

 さらに、治療により、重症薬疹患者の症状が改善した場合にはRIP3値は低下し、治療しても症状が悪化したケースではRIP3値が上昇した。この結果を踏まえ、「RIP3は重症薬疹の治療効果の判定にも有用である可能性が示された」としている。

(あなたの健康百科編集部)

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