爪白癬、うつす前にしっかり治療を
2020年02月28日 06:00
季節が冬から春になり、気温が少しずつ上昇する時期に気を付けたいのが、水虫(白癬)菌の増殖だ。中でも、日本人の10人に1人が罹患しているとされる爪白癬は、再発や感染拡大を防ぐためにも、白癬菌が活性化していない冬場のうちに治療することが重要となる。2月5日、埼玉医科大学総合医療センター皮膚科教授の福田知雄氏が東京都で講演し、爪白癬を治療する意義や最新のガイドラインなどについて解説した。
家族に感染させやすい
多くの場合、白癬菌が足を経由し爪の下に侵入して起こる爪白癬。患者は若者より高齢者に多く、2016年の調査では60歳以上が全体の約80%を占めていた。
爪白癬を治療せずに放置すると、再発や足の痛みでQOLが低下する他、爪が肥厚・変形して転倒するリスクが高まる。とりわけ最も注意が必要なのが、家族や他の人にうつしてしまうことだ。剝がれ落ちた患者の皮膚や爪から散らばった白癬菌は、「場合によっては1年以上も生存している可能性がある」と福田氏。特に、家族から感染するリスクは水泳やゴルフなどの足拭きマットを共用するスポーツを行うよりも著明に高く(図)、同氏は「爪白癬になったら、家族も一緒に受診すべき」と言う。
図. 真菌症の感染リスク
(日本皮膚科学会雑誌 2001; 111: 2101-2112を基に編集部作成)
最新のガイドラインでは経口薬が「推奨度A」
では、爪白癬をしっかり治療するにはどうすればよいのだろうか。現在、日本で承認されている爪白癬の治療薬は、外用薬2剤(エフィナコナゾール、ルリコナゾール)と経口薬3剤(テルビナフィン、イトラコナゾール、ホスラブコナゾール)の5剤。福田氏によると、再発を防ぎ白癬菌の感染源を絶つには、爪の混濁部を消失させるだけでなく、経口薬を服用して皮膚糸状菌を陰性化させる必要があるという。
2019年には、爪白癬や足白癬の治療指針を示した『皮膚真菌症診療ガイドライン』が10年ぶりに改訂。外用薬2剤がいずれも「推奨度B」とされたのに対し、経口薬3剤は「推奨度A」とされた(表)。
表. 爪白癬に関するクリニカルクエスチョン(CQ)と推奨度
(日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019)
自分が痛みや不快感を覚えるだけでなく、大切な家族にうつしてしまう可能性が高い爪白癬。気になる症状があれば早期に皮膚科を受診し、しっかり治療して菌を根元から断ちたいところだ。
(あなたの健康百科編集部)