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新型コロナウイルス、正しい対処法は?

 2020年03月03日 06:00

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大の一途をたどる中、デマや根拠の乏しい情報が飛び交いマスクやトイレットペーパーが手に入りにくくなるなど、日常生活が過剰に脅かされる状態になりつつある。厚生労働省は今年(2020年)3月1日付で一般市民に向け、新型コロナウイルス(2019-nCoV)に関する情報をまとめた「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」を公開し正しい情報提供を呼びかけており、その一部を紹介する。

新型コロナウイルスってどんなウイルス?

 ヒトへの感染が確認されている「コロナウイルス」は現在までに7種類が確認されている。うち4種類は一般の「かぜ」の原因となるウイルスで、感染しても多くは軽症で済む。残りの3種類が、2002年に中国で発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の病原体であるSARSコロナウイルス、2012年にサウジアラビアで発生した「中東呼吸器症候群(MERS)」の病原体であるMERSコロナウイルス、そして昨年12月以降に問題となっている「新型コロナウイルス」である。70%の濃度のアルコール消毒で感染力を失うことが知られている。

■人に感染するコロナウイルス(human coronavirus;HCoV)
・ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E):かぜの病原体
・ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43):かぜの病原体
ヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63):かぜの病原体
ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1):かぜの病原体
・SARSコロナウイルス(SARS-CoV):重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原体
・MERSコロナウイルス(MERS-CoV):中東呼吸器症候群(MERS)の病原体
・新型コロナウイルス(2019-nCoV):新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病原体

 SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルスはいずれも動物由来のコロナウイルスである。新型コロナウイルスの起源については不明だが、遺伝子配列がコウモリに由来するSARSコロナウイルスに近いため、コウモリである可能性が考えられている。

新型コロナウイルスはどのように感染する? 

 現時点では「飛沫感染」と「接触感染」の2つの経路が考えられる。飛沫感染は感染者の飛沫(くしゃみ、咳、唾液など)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染する。もう1つの接触感染については、感染者がくしゃみや咳を抑えた手でドアノブなどに触れてしまうと、次に触れた人の手にウイルスが付着して感染に至る。

飛沫感染:くしゃみ、咳、唾液など(屋内などで他の人との距離が確保できない状況に注意)
接触感染:つり革、ドアノブ、手すり、スイッチなど(直接接触しなくても感染する)

 なお、国内の感染状況から空気感染は起きていないと考えられるが、閉鎖空間で多くの人と近距離で会話する状況など、一定の環境下であれば、咳やくしゃみなどがなくても感染が拡大するリスクがある。

 また、感染者の糞便から新型コロナウイルスが検出されたという報告があり、新型コロナウイルス感染症の患者、感染が疑われる人などがトイレを汚した場合には次亜塩素酸ナトリウム(市販の家庭用漂白剤、1,000ppm)またはアルコールによる清拭が推奨される。

 食品を介した新型コロナウイルスの感染は報告されていないが、食品や食事の配膳を行う際には不特定多数の人と接する可能性があるため、接触感染に注意する。コロナウイルスはアルコールと熱(70度以上)に弱いことが分かっており、食中毒予防として行われている一般的な衛生管理が実施されていれば心配する必要はない。

感染を防ぐためには? 

 新型コロナウイルスの感染を防ぐには、一般的な感染症対策や健康管理が最も重要である。具体的には、せっけんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒などを行い、できる限り混雑した場所を避け、十分な睡眠を取ることも重要である。

 厚労省の調査では、新型コロナウイルス感染者の多くは周囲の人にほとんど感染させていない。しかし、屋形船やスポーツジムの事例など、1人の感染者から感染が拡大したと疑われる事例も存在する()。換気が不十分な密閉された環境では2次感染者数が多いこと示されており、急激な感染拡大を防ぐためには換気不十分な空間に集まることは避けるべきである。

図. 新型コロナウイルスの2次感染の実態(2020年2月26日時点)

マスク、トイレットペーパーが手に入らない!どうすればいい?

 マスクは咳やくしゃみによる飛沫とそれらに含まれるウイルスなどの病原体の飛散を抑制する高い効果があるため、これらの症状がある場合は積極的にマスクを着用すべきである。しかし、マスクの着用による新型コロナウイルス感染予防については効果が認められているとはいえない。屋内や乗り物など、換気が不十分な場所では感染予防策の1つと考えられるが、屋外などでは相当混み合っていない限り、マスク着用の効果は認められていない。

 現在、マスクの入手が困難な状況だが、国内メーカーによる24時間体制の増産により毎週1億枚を超える供給が確保される見込みであり、輸入も増加しているという。ただし、厚労省は「生産・輸入したマスクは医療体制を確保して治療を進展させ、同時に公共の場での感染の拡大を防ぐ観点でも重要な物資。医療機関、高齢者が多く利用する施設、バスやタクシーなど公共交通機関などに優先的に出荷せざるをえない側面もあり、店頭に並ぶまでには一定程度の時間を要する」と理解を求め、また、転売目的での購入や不要不急の買いだめを控えるよう呼びかけている。なお、マスクの生産・輸入・販売の状況は、経済産業省の公式サイトで逐次発信している。

 トイレットペーパーやティッシュペーパーが不足しているという情報が拡散されているが、経産省によるとの通り不足していないという。ほとんどが国内生産で、かつ十分な在庫があり、一部店舗での品切れも順次解消していく見通しとのことである。原材料の4割は輸入パルプ材だが、これらは北米・南米からの輸入であり、中国などのアジアには依存していないとしている。

表. トイレットペーパーやティッシュペーパーの供給状況

感染が疑われる場合はどうすべき?

 発熱などのかぜ症状がある場合は仕事や学校を休み、外出は控えなければならない。現時点では、かぜ症状の原因は新型コロナウイルス感染症以外の病気によるものが圧倒的に多いため、まずはかかりつけ医に相談すべきである。「帰国者・接触者相談センター」が案内する「帰国者・接触者外来」は新型コロナウイルスの感染が疑われる人が受診しているため、こちらを受診するとかえって感染するリスクが高まることになる。

 なお、世界保健機関(WHO)によると、新型コロナウイルス感染症の潜伏期間は1〜12.5日(多くは5〜6日)とされており、また、これまでのコロナウイルスの情報などから感染が疑われる場合は14日間にわたり健康状態を観察することが推奨されている。

どうして検査をしてくれないの?

 新型コロナウイルスの検査(PCR検査)を希望しても断られたという報道があるが、2月29日現在、国立感染症研究所・検疫所に加え、地方衛生研究所、民間検査会社や大学病院などの協力を得ながら検査件数は1日4,000件を超えるに至っており、民間検査機関や大学病院に試薬などを提供し、さらに検査能力を拡大しているという。また、3月1週中には検査に医療保険が適用される見通しであり、保健所を経由せずに、医師が民間の検査機関に直接検査を依頼できるようになる。同時に、3月中の導入を目指して新たな簡易検査機器の開発が進められおり、多くの患者がPCR検査を受けることができるようになるという。

 新型コロナウイルスについては「インフォデミック(爆発的情報感染)」の様相を呈しつつあるが、正しい情報を基にした冷静な対応が望まれる。

(あなたの健康百科編集部)

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