大麻乱用で統合失調症リスク5倍に?
デンマーク地域住民300万人の前向きコホート研究
2016年10月31日 07:00
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(c)Getty Images ※画像はイメージです
アルコールや大麻などの物質乱用が、後に統合失調症を発症するリスクに有意に関連していたとするデンマークの地域住民300万人超のデータを用いたコホート研究の結果が国際早期精神病学会(10月20~22日、ミラノ)で発表された。研究を実施した同国Copenhagen University Hospitalのグループによると、特に大麻の乱用は統合失調症リスクの約5倍の増大に、アルコールの乱用は同リスクの約3倍の増大に関連していたという。この他、同学会では母親の物質乱用が子供の統合失調リスクの増大に関連していたとする解析結果も発表された。
母親の大麻乱用は子供の統合失調症リスク6倍に関連
物質乱用と統合失調症との関連は以前から指摘されていたが、複数の物質を乱用した場合の影響などが考慮されていないなど、解析の手法に問題点があった。そこで研究グループは今回、同国で1955~99年に出生した313万3,968人のデータを用いた前向きコホート研究を実施。アルコールや大麻、アンフェタミン、コカイン、幻覚薬、オピオイド、鎮静薬などの物質乱用と統合失調症リスクとの関連について検討した。
20万4,505例に物質乱用の診断歴が、2万1,305例に統合失調症の診断歴があった。解析の結果、なんらかの物質乱用の診断歴がある人では、統合失調症発症のハザード比(HR)が6.04(95%CI 5.84~6.26)だった。物質の種類別に見た統合失調症のHRは大麻乱用で5.20(95%CI 4.86~5.57)、アルコール乱用で3.38(95%CI 3.24~3.53)、幻覚薬乱用で1.86(95%CI 1.43~2.41)と、ほとんどの物質の乱用について関連が認められた。また、物質乱用の診断から10~15年経過していても、統合失調症を発症するリスクは高まっていたという。
この解析結果について、同グループは「今回の研究は観察研究であり、物質乱用が統合失調症発症の原因であることを示すものではない」とした上で、「統合失調症の発症リスクが高い人は物質を乱用しがちであるなど、さまざまな要因が考えられ、両者の関係は複雑だ」と説明している。
一方、同グループは「物質乱用の既往がある母親から生まれた子供では、統合失調症リスクが高い」とする研究結果も同学会で発表。大麻乱用の経験がある母親から生まれた子供では、乱用の診断が出産前か出産後かにかかわらず、統合失調症リスクが約6倍だった他、出産前にアルコール乱用の診断歴がある母親から生まれた子供では同リスクが5.6倍だったとする解析結果を報告した。
(岬りり子)