わが国の帝王切開率に地域差
全国平均は18.5%で「適切」の範囲内
2017年11月21日 13:09
東京大学は11月20日、全国の年間を通じた帝王切開術実施状況に関するわが国初の調査結果を発表。2013年の帝王切開率は18.5%で、総じて適切に実施されていることが示された。一方、都道府県別に見ると、周産期医療に関するマンパワーや施設が不足している地域では予定帝王切開術が多く行われていることが分かり、周産期医療体制の地域差が明らかになった。
OECD加盟国平均は28%、WHO推奨は10~15%
最近では、訴訟リスクの回避や患者と医療従事者の双方が出産までの予定を立てやすいといった社会的理由により、世界的に帝王切開率が増加傾向にある。帝王切開術は、経腟分娩と比べ手術や麻酔に伴う危険が高く、次回の妊娠や出産にも影響を及ぼす可能性があり、母子の健康を脅かすことが懸念されている。世界保健機関(WHO)は理想的な帝王切開率を10~15%としているが、近年の経済協力開発機構(OECD)加盟国の帝王切開率の平均は28%。日本では年間を通じた帝王切開術の状況が把握されていなかったため、同大学大学院公衆衛生学教授の小林廉毅氏らが共同で研究を行った。
周産期医療体制が脆弱な地域で予防帝王切開実施の傾向
発表によると、2013年に全国の医療機関から提出されたレセプト(診療報酬請求明細書)のうち、診療行為コードに帝王切開術を含むレセプト件数は19万361件で、2013年の出生数が102万9,816人であることから、帝王切開率を18.5%と算出した。WHOの推奨範囲を超えているが、小林氏らは比較的近く保たれており、「総じて適切に行われている」との見解を示した。
都道府県別の帝王切開率は14~25.6%と差があり、母親の年齢を調整してもほぼ同様であった。予防帝王切開率は、周産期医療におけるマンパワーや新生児集中治療室(NICU)病床数が少ない県や分娩取り扱い機能が分散している県で高い傾向にあった。それらの地域では、リスクを回避する手段として予防帝王切開術を行っているとみられ、背景には地域による周産期医療体制の相違が示唆された。
一方、緊急帝王切開率には、地域の周産期医療体制との明らかな関係や曜日による変動は認められず、場所や時期に関係なく緊急対応が行われていることが分かった。
(今手麻衣)