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AI活用でどう変わる? 未来の皮膚科医療

2019年07月10日 05:10

7名の医師が参考になったと回答 

 近年、人工知能(AI)という言葉がメディアなどで日常的に使われるようになり、その技術をいかに活用すべきかを議論する時期に来ている。医療分野においても例外ではなく、日本皮膚科学会はAI技術をいかに患者や医療者に還元するかを検討すべく、日本皮膚科学会は、日本医療研究開発機構(AMED)事業の一環として昨年(2018年)から皮膚疾患の画像データを集積している。第118回同学会(6月6~9日)では、東北大学大学院皮膚科の志藤光介氏がこのデータ集積の成果と、同大学で開発中のAIを活用した2つのプロジェクトについて報告し、皮膚科医療の未来を展望した。

的確な診断補助は良質なデータの蓄積が必須

 最初に志藤氏は、日本皮膚科学会が画像データを集積するに至った背景として、日常診療において皮膚科専門医でないかかりつけ医が、皮膚疾患を診察するケースが少なくないことを挙げた。中には皮膚がんなども含まれており、患者を速やかに適切な医療機関につなげられるよう、AIによる診断補助システムの構築が求められているという。しかし、AIの診断精度が低ければ、患者もかかりつけ医もいたずらに混乱してしまうだけである。このような皮膚科医療の混乱を未然に防ぐため、同学会では2016年にAIワーキンググループを発足。昨年度にはAMEDのICT事業を学会として受託し、北は東北大学から南は琉球大学までの大学病院15施設から皮膚疾患関連画像を集積するナショナルデータベース "National Skin Disease Database(NSDD)"の構築に動き出した。

 昨年度には、NSDDに皮膚臨床画像約17万件、ダーモスコピー画像約1万件、皮膚病理組織画像約3万件を集積した。集積されたこれらの画像について、疾患ごとの受診時平均年齢や性の偏り、年齢のばらつきなどの傾向を検証したところ、各疾患において既存の疫学データと一致する傾向が確認された。同氏は「実臨床に即した皮膚疾患画像データベースの基礎が構築された」と述べ、「一般的なAIは、テレビゲームや画像認識など答えが決まっている分野で活用しやすいのに対し、医療用AIではまず正解(的確な診断)のデータを蓄積することが重要だ」とその意義を強調。NSDDの良質なデータからAIが診断パターンを学習し、精度の高い診断補助につなげたいとの意向を示した。

患者向け・医師向けに2つのAIシステムを開発中

 続いて志藤氏は、AIの特徴として、ある事象を数値化、定量化できる点を挙げた。例えば、皮膚科医は視診で「紅斑がある/浸潤は軽度/皮疹の面積は母指頭大」といった判断を行い、経験則などに基づき「脂漏性角化症」と診断を付けたりする。その一方で、AIが行う視診では「R=100、G=0、B=0の紅斑(RGBはウェブや液晶ディスプレイなどで色調を決定する項目)/浸潤の厚さ0.1~0.2mm/皮疹の面積は3cm2」、診断では「脂漏性角化症80%、尋常性疣贅10%、基底細胞がん3%、悪性黒色腫2%の可能性がある」というように数値化・定量化した回答・評価がなされる。この特徴を利用して、東北大学では皮膚科領域に特化した、アトピー性皮膚炎の治療支援を行う患者向けAIと、確定診断を補助する医師向けAIの開発を進めていることを紹介した。

 慢性疾患であるアトピー性皮膚炎においては、患者の服薬コンプライアンスが低下したり、頻回の受信により生活が制限されたりしてしまうため、症状悪化時のみに受診するという問題があった。結果的に悪化した患部のみの評価で治療が行われることになり、症状の変化に応じた介入がなされずに慢性化する例もある。そこで同氏は、アトピー性皮膚炎患者がアプリを使って自分の皮疹を撮影し、AIが重症度を判定したり服薬・生活指導を行ったりするシステム「A-DAI project」を考案。患者が受診するタイミングを判断しやすくなり、治療の空白期間を埋めるのにも役立つという。

 一方、確定診断補助AIシステム「Deep Ackerman Project」は、皮膚病理診断を行うことが狙いだ。視覚的に情報を処理する「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」というシステムを利用する。CNNは、正常あるいは異形成の皮膚細胞の分布を捉え、かつリンパ節を網羅的に検索できるため、転移性腫瘍を発見することができると考えられる。病変を強拡大する既存のAIより診断精度が高く、新たな診断学の構築につながる可能性もあるとして、現在特許出願中である。

 診療ビジョンとして同氏は、患者が受診や診療科の選択に迷ったとき、罹患している確率の高い皮膚疾患などを汎用型AI(A-DAI)によって把握し、専門医の早期受診を促すとともに、専門医は専用型AI(Deep Ackerman)を活用し治療方針を決定する―を紹介した。同時に、A-DAIを活用して、遠隔診療や専門医へのフィードバックにつなげることで早期かつ適切な治療、寛解期の維持、診療負担の軽減などにも貢献できるという。

 同氏は「AIには無限の可能性があり、皮膚科医療においても医師らが希望する用途に合わせて活用すれば、より利便性を高めることができる」と展望し、「幅広く意見を求めてこれらの開発を次世代につなげたい」と結んだ。

(須藤陽子)

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