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〈エニグマCase File 1〉Q3 正解

正解

4 ステロイド

大動脈周囲炎の治療は、ステロイドとなります。

【治療経過】

 悪性腫瘍、自己免疫疾患、尿路狭窄の合併症は認められないので、内科的治療の適応と考え、プレドニゾロン35mgから開始しました。投与直後から白血球数が低下、CRPが9.3まで上昇したものの速やかに低下。プレドニゾロンを漸減し20mgの段階で退院となりました。退院3カ月後のMRIでは大動脈周囲の所見が消失、大動脈周囲炎が確認されました。治療的診断でした。

【治療前後の腹部CTとMRI】

【治療経過】

【解説】

概要

 大動脈周囲炎は、動脈硬化などを伴い大動脈周囲に慢性の炎症性線維増生を生じ、線維化により周囲の組織を巻き込み、尿路狭窄や疼痛の原因にもなります。CTで大動脈周囲の炎症性肥厚(mantle sign)、水腎症や尿管狭窄などが認められます。疾患概念としては特発性後腹膜線維症、炎症性大動脈瘤や縦隔線維症を含みますが、これらの疾患が共通の機序で発症するのかは不明です。薬剤、自己免疫疾患や悪性腫瘍に伴い生じる場合もあり、大動脈術後の外膜組織の炎症性変化は予後にも関連します。
 なお、結節性動脈周囲炎〔Periarteritis nodosa;PN、現在は結節性多発動脈炎(Polyarteritis nodosa;PAN)と顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis;MPA)に分離〕と違い、筋肉・関節症状や皮膚症状、高血圧症は認められません。

疫学

  • 10万人当たり1.35人

病理

  • 外膜の著明な線維化、肥厚やリンパ濾胞形成に伴うリンパ浸潤
  • 病変部位は、胸部・腹部大動脈?大腿動脈(頻度は腹部大動脈?大腿動脈が多い)
  • 血管外膜のBリンパ球が、酸化LDLコレステロールやセロイドに対する抗体を産生し、その結果、血管外膜の炎症や線維化を惹起させると考えられている
  • IgG4関連疾患(IgG4陽性形質細胞浸潤)の約20%が大動脈周囲炎

主な症状

  • 炎症性大動脈瘤:腰痛、腹痛、食欲不振、体重減少、腹部の拍動性腫瘤
  • 特発性後腹膜線維症:非定型的な腹痛、背部痛、水腎症による腰背部痛、浮腫、乏尿
  • 二次性のもの:薬剤、自己免疫疾患や悪性腫瘍に伴う諸症状

主な合併症

  • 水腎症、腎不全
  • 炎症が心外膜や胸膜、腹膜などに波及すれば心不全、胸膜炎の原因となる

主な治療法

  • 薬物治療:ステロイドや免疫抑制薬
  • 尿管ステント留置
  • 経皮的腎?、透析導入

【出題者からひとこと】

 大動脈周囲炎の症状は、腰痛、腹痛や食欲不振など一般的な胃腸炎の症状と変わりありませんが、少なくとも1カ月以上続く症状の場合はCTなどの画像診断を積極的に行うべきです。

 大動脈周囲炎は、後腹膜線維症、炎症性大動脈瘤や縦隔線維症の3つの複合疾患の総称ですが、後腹膜線維症と炎症性大動脈瘤の鑑別には、治療前でなく、治療後の画像所見で患部の陳旧性炎症所見の有無により可能になります。

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